惑星エラムより愛をこめて 第四部 野良アンドロイド編 【ノーマル版】

ミスター愛妻

文字の大きさ
上 下
71 / 125
第五十二章 ユーラシアの戦い

ロプノール共和国

しおりを挟む

 トルファンに衝撃が走りました。
 ナーキッドの兵団は香港から長駆進撃してくるので、ハミに来る頃には、物資補給もとどこおり、疲労していると読んでいたのです。

 だからハミでこれを叩き、共和国としての地位をナーキッドに認めさせる。
 内政不干渉を約束させ、あわよくば貿易を開始する……

「どうするのか!」
「奴らはどうした!」
「なに、いない!」

 ロプノール共和国軍は、ありったけの兵員をハミに集結していたのです。
 その軍が壊滅した今、首都トルファンは逃げようとする市民でごった返しています。

 市民といっても支配階級……
 ロプノール共和国の内部は、少数貴族の独裁体制、寡頭政――有名なのは古代ローマ共和制の時の元老院体制――で、それ以外の国民は全て奴隷、それはアメリカ南部の黒人奴隷なみの扱いです。

 ロプノール共和国の国民は、何らかの貴族の支配下にあり、生きるも死ぬも、そう婚姻生殖、全てにおいて支配されているのです。
 そしてその貴族たちは余っている奴隷女を、自爆婦人兵として供出したのです。

 逃げ出すのは独裁貴族ばかり、残るのは奴隷、そして蔓延する盗賊……

 近衛師団はトルファンに無血入城、すぐに治安回復と占領政策をするハメになりました。
 長谷川司令官が、「ミコ様、どうすれば……」
 この人は根っからの武人、とても占領行政などはできそうもありませんし……一人いましたね……
「高倉雪乃さん、任せました、後はお願い!」

 ものすごく文句を云われましたが、しばらくの間ということで、なんとか引き受けてくれましたが……
「ミコ様が適任でしょう、悪辣さでは宇宙一なのですから!」

 酷いことを云いますね、ならこう言い返してあげましょう。
「現地の女を調達するまでです、しばらくの辛抱ですよ」
「ミ・コ・さ・ま……!」

 華宮洋子さんといい高倉雪乃さんといい、日本のプリンセスはお淑やかなはずでは……
 私の周りの女たち、皆が皆、怖くなるのですよね……どうも尻に敷かれてしまうのです……

 私たちはしばらく、トルファンに駐留することになっています。
 ミハイロフスキー城からカザフ、タクラマカンを鎮撫しながらやって来る、ヴァンパイア軍団を待っているのです。
 あと3日ほどでここに着く思います。

「ところで雪乃さん、ヴァンパイア軍団が来るまでに、テラのものでない勢力が何処にいるか、調べなければならないのですが、やはり金ですかね」

「……話題をそらすのですか?でも……まずは奴隷女から聞きましょう、一番喋ってくれそうですから」
 すこし矛先が鈍りました。

 膨大な奴隷女から聞き取り調査をしますと、『夜に囁く物』がいるようです。
 奴隷女の中には権力闘争に負けて、奴隷に落とされた者も結構いたのです。
 その者に対しても夢のなかで『夜に囁く物』がいたと複数の報告があるのです。

 特にその様な奴隷女は惨めな状態で、近隣の地域から非合法に手に入れた少年たちの、精を受け入れ子を孕む……奴隷を生産させられているのです。

 まったく、ここでも腹の立つ……とにかく貴族とその一族は全員、奴隷に落としてくれる!

 でもこの国はほっといても、いつかは滅亡するのです。
 テラではボルバキア菌がのさばっているのですから、マレーネさんは、この菌の除菌はしないのです、もっとも私もする気はないのですが……
 抗ボルバキア菌薬は簡単には供給しないのですよ。

 『夜に囁く物』ね……
 北米で活動していたと思われる、『変な噂の女』の他にもいたのですね……

 戦闘用アンドロイドが現れたアメリカには、野良の根拠地はありませんでした。
 だから怪しいのはここしか残っていないのです。

 そしてあの妖精型自爆爆弾ロボット……
 9割の確率で、このロプノール共和国の何処かに、野良の拠点があるはずです。

 エールさんとヴァルキュリヤも、呼んだほうがいいですね……
 オルメカたちは虫相手に忙しそうですし……
 ゼノビアの軍団はヴィーナス・ネットワークの警備を任せいてる上に、いざというときの戦略予備ですし……

 意外に戦力が薄いわね……
 私しかいないではありませんか……まあテラの事ですし……やぶさかではないのですけど。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

女神様の使い、5歳からやってます

めのめむし
ファンタジー
小桜美羽は5歳の幼女。辛い境遇の中でも、最愛の母親と妹と共に明るく生きていたが、ある日母を事故で失い、父親に放置されてしまう。絶望の淵で餓死寸前だった美羽は、異世界の女神レスフィーナに救われる。 「あなたには私の世界で生きる力を身につけやすくするから、それを使って楽しく生きなさい。それで……私のお友達になってちょうだい」 女神から神気の力を授かった美羽は、女神と同じ色の桜色の髪と瞳を手に入れ、魔法生物のきんちゃんと共に新たな世界での冒険に旅立つ。しかし、転移先で男性が襲われているのを目の当たりにし、街がゴブリンの集団に襲われていることに気づく。「大人の男……怖い」と呟きながらも、ゴブリンと戦うか、逃げるか——。いきなり厳しい世界に送られた美羽の運命はいかに? 優しさと試練が待ち受ける、幼い少女の異世界ファンタジー、開幕! 基本、ほのぼの系ですので進行は遅いですが、着実に進んでいきます。 戦闘描写ばかり望む方はご注意ください。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

噂の醜女とは私の事です〜蔑まれた令嬢は、その身に秘められた規格外の魔力で呪われた運命を打ち砕く〜

秘密 (秘翠ミツキ)
ファンタジー
*『ねぇ、姉さん。姉さんの心臓を僕に頂戴』 ◆◆◆ *『お姉様って、本当に醜いわ』 幼い頃、妹を庇い代わりに呪いを受けたフィオナだがその妹にすら蔑まれて……。 ◆◆◆ 侯爵令嬢であるフィオナは、幼い頃妹を庇い魔女の呪いなるものをその身に受けた。美しかった顔は、その半分以上を覆う程のアザが出来て醜い顔に変わった。家族や周囲から醜女と呼ばれ、庇った妹にすら「お姉様って、本当に醜いわね」と嘲笑われ、母からはみっともないからと仮面をつける様に言われる。 こんな顔じゃ結婚は望めないと、フィオナは一人で生きれる様にひたすらに勉学に励む。白塗りで赤く塗られた唇が一際目立つ仮面を被り、白い目を向けられながらも学院に通う日々。 そんな中、ある青年と知り合い恋に落ちて婚約まで結ぶが……フィオナの素顔を見た彼は「ごめん、やっぱり無理だ……」そう言って婚約破棄をし去って行った。 それから社交界ではフィオナの素顔で話題は持ちきりになり、仮面の下を見たいが為だけに次から次へと婚約を申し込む者達が後を経たない。そして仮面の下を見た男達は直ぐに婚約破棄をし去って行く。それが今社交界での流行りであり、暇な貴族達の遊びだった……。

【完結】クビだと言われ、実家に帰らないといけないの?と思っていたけれどどうにかなりそうです。

まりぃべる
ファンタジー
「お前はクビだ!今すぐ出て行け!!」 そう、第二王子に言われました。 そんな…せっかく王宮の侍女の仕事にありつけたのに…! でも王宮の庭園で、出会った人に連れてこられた先で、どうにかなりそうです!? ☆★☆★ 全33話です。出来上がってますので、随時更新していきます。 読んでいただけると嬉しいです。

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“  瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  だが、死亡する原因には不可解な点が…  数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、 神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

処理中です...