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第五十二章 ユーラシアの戦い

ハミ攻防戦 其の一

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 ハミ市……今ではロプノール共和国の中国との国境の町となっています。

 ここから先が正念場、トルファン盆地に侵攻するには、このハミを陥落させる事が肝要です。

 アジアの最深部で、このロプノール共和国はゴビの石油や石炭のエネルギー資源を握り、食料もオアシス都市のカレーズ――地下水路――などのお陰で、それなりに生産しています。

 そのおかげで周辺が飢餓でも、この共和国内ではその様なことがないと思われます。
 国家が機能しているのが何よりの証拠……

 長谷川司令官は軍使を送り、一応降伏を勧告しましたが拒否の回答がありました。
 帰ってきた軍使の報告では、ハミ市には一般市民が見受けられないとのこと。

 敵はここに兵力を集中しているが、兵力不足なのか、婦人兵が異常に多いととの事でした。

「防衛ラインが薄いですな、市街戦に持ち込むつもりのようです」
 私にはそれだけとも思えません。

「自爆攻撃に気をつけて下さい、それに囚人を盾に突撃してくるかも知れませんから……」
「そんな事があるのですか……」

 このテラのパラレルワールド、アースでは日本軍は神風攻撃をしたのですが……イスラムゲリラは自爆テロを実行しますし……
 朝鮮戦争では、中国義勇軍が囚人を地雷原に突撃させていますし……

「あくまでも可能性の問題です」
 とは答えておきましたが……
 嫌な予感がするのです。
 予感が当たれば……近衛師団は敗走するかも知れないのです。

 敵は町の中に篭っています。
 近衛師団は明日早朝から総攻撃を開始、敵の防衛戦を突破、市街戦も覚悟の上です。

「ミコ様、敵が夜襲をかけてきそうです」
「夜襲を誘っているのでしょう?」
 美味しそうな布陣をしておい、て今さら何を云うのか。
 案の定、深夜に夜襲がありましたが、嫌な予感が当たりました。

 婦人兵が突撃してきたのです、それも無謀な突撃、波状攻撃です。
 次々と女の死体が積み上がります。
 倒しても倒しても突撃してくる婦人兵に、近衛師団の兵士たちに動揺が起こり始めます。

 この敵は女を捨て駒にしているのです、明らかに捨てているのです……

「いけない!」
 私は近衛師団と婦人兵の間にたちました。
 そして敵兵を殺しまくったのです。

 敵の婦人兵……身体に手榴弾を巻きつけて突撃してくる婦人兵を片っ端から倒しています。
 彼女たちの血が私を染めます、一人で殺しに殺して……、突撃がやみました、婦人兵を全て殺したのでしょう……

 戻ってきた私、自分でも泣いているのが判ります。
 涙も拭かずに私は命じました。
「全軍突撃せよ、女に自爆攻撃させて、のうのうと後方でふんぞり返る卑怯者を、一人残らず殺しなさい、生かして帰すことはなりません!」

「スピンクス!魔犬を率いて我が命を実行せよ!近衛師団の露払いをせよ!」
「仰せのままに」

 スピンクスが、すーと走っていきます、従うようにワン君たちが走っていきます。
「主の命に背くまじ、敵を撃滅せよ」
 スピンクスの檄が聞こえます。

 ライラプスが凄い勢いで、壁という壁にぶち当たりますと、轟音とともに建物が崩れ落ちます。
 かなりの数の敵が生き埋めになっているでしょう。

 バーゲストがガチャと音を立てて、黒い霧を出し始めますし、狛犬も角がでています、超音波が出ているのか、周りの者が次々と溶け始めています。

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