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第五十二章 ユーラシアの戦い
中原また鹿を追い
しおりを挟む「中原(ちゅうげん) 還(ま)た鹿(しか)を逐(お)い、筆(ふで)を投(とう)じて戎軒(じゅうけん)を事(こと)とす」
紅茶を飲みながら、長谷川司令官がつぶやきました。
デヴォン島でのご苦労を慰労することもかねて、私は長谷川司令官をお茶に呼んだのです。
傍にはマドレーヌさんのお手製の、お菓子があります。
やはりパテェシエさん、お上手なこと……
しかもお色気抜群で控えていますが、長谷川司令官も殿方、ちょっと控えなさいな。
身体を直してあげて、チョーカーを授けて、近頃は壊れる前に戻ったと、本人は云っていますが、その過剰なお色気はもともとなのでしょうかね……
どうも私のテラでのお料理担当は、お色気がありすぎる……夜も激しいのですから……
「唐詩選ですか?」
「しかり、ミコ様はよくご存じで?」
「述懐(じゅかい)の詩はあまりに有名ですから、魏徴(ぎちょう)でしたね」
唐の太宗の臣、諫議大夫であった魏徴(ぎちょう)が作った唐詩選の冒頭を飾る詩です。
「すこし言わしてもらえるなら、最初は中原(ちゅうげん)初(はじ)めて鹿(しか)を逐(お)い、でしたね、でも再考したのか還(ま)たに変えたはず、私はこの還(ま)たのほうが好きですが、長谷川司令官はやはり軍人ですね、この詩を呟くのですから」
私は続けました。
「人生意気に感ずる、功名誰か復(ま)た論ぜぬ」
「勇壮な詩ですな、しかし私ぐらいの年になると、この言葉は不似合いですな、私は別の部分が好みです」
この元近衛師団長さん、私は好きですよ。
父親をほとんど知らない私としては、この人に父親のイメージがダブルのです。
「どの部分がお好みなのですか?」
「季布(きふ)二諾(にだく)無(な)く、侯えい(こうえい)一言(いちごん)を重(お)もんず」
また通な部分を……侠客が好みそうです。
「ミコ様の行動も煎じ詰めれば、ここに行き着くのではありませんか?」
「たしかにそうかも知れません、言霊は力を持ちますから」
そう、不用意な一言で私は女を抱き、その女のために戦うはめに陥る……
中原 還た鹿を逐い……私は再び世界を救うために、いや抱いた女のために戦っている……
このテラでの出来事は、エラムの規模こそ違え、そっくりのスケジュールではないか?
何処かに、このような話があったような……
日月神示……でしたか、雛形思想というか、内八洲(うちやしま)で起こったことは、投影されて外八洲(そとやしま)にも起こる……
そんな話だったか……しかしなにか腑に落ちた様な気がします。
そもそもパラレルワールドのテラ、何があっても不思議ではないのです。
でも今は、その様なややこしい話は後にして、ナーキッドはユーラシアアジアに侵攻するのです。
アメリカ戦線が片付いた今、私たちはアジアを支配しようとしているのです。
アメリカのように、ナーキッドに従う国家を成立させることが目的です。
アメリカは東部と西部、アラスカとハワイ、それにプエルトリコに分割しました、第四帝国、つまりNSM88は東部を支配しています、そのまま任せたのです。
ナーキッドの命に従うことを条件にですが、エネルギーや食料も援助することにしました。
カテゴリーとして、三級市民国家ですが、努力次第で二級には引き上げると言ってあります。
一応献上品などを差し出されたのは、誰のさしがね……
他のアメリカ諸国は、自ら国家を作るまで、国連の信託統治、アフリカも同様です。
といっても、希望すればすぐに、ナーキッドに移管してくれそうですね……
オセアニア地域は一部を除いて壊滅しています。
例のスーパーボルケーノはニュージーランドにもあったのです。
生き残った人々は、一旦オーストラリアのタスマニアに移住してもらって、ここはなんとか住めるようにしました。
勿論このタスマニアは二級市民国家、南米と同じランク、そして元の土地を再開発してもらっています。
残るはアジア、近東、中東、極東、南アジア……そしてアジアの最深部、自らロプノール共和国と称している国家……
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