惑星エラムより愛をこめて 第四部 野良アンドロイド編 【ノーマル版】

ミスター愛妻

文字の大きさ
上 下
62 / 125
第五十二章 ユーラシアの戦い

中原また鹿を追い

しおりを挟む

「中原(ちゅうげん) 還(ま)た鹿(しか)を逐(お)い、筆(ふで)を投(とう)じて戎軒(じゅうけん)を事(こと)とす」
 紅茶を飲みながら、長谷川司令官がつぶやきました。

 デヴォン島でのご苦労を慰労することもかねて、私は長谷川司令官をお茶に呼んだのです。
 傍にはマドレーヌさんのお手製の、お菓子があります。

 やはりパテェシエさん、お上手なこと……
 しかもお色気抜群で控えていますが、長谷川司令官も殿方、ちょっと控えなさいな。

 身体を直してあげて、チョーカーを授けて、近頃は壊れる前に戻ったと、本人は云っていますが、その過剰なお色気はもともとなのでしょうかね……
 どうも私のテラでのお料理担当は、お色気がありすぎる……夜も激しいのですから……

「唐詩選ですか?」
「しかり、ミコ様はよくご存じで?」
「述懐(じゅかい)の詩はあまりに有名ですから、魏徴(ぎちょう)でしたね」

 唐の太宗の臣、諫議大夫であった魏徴(ぎちょう)が作った唐詩選の冒頭を飾る詩です。
「すこし言わしてもらえるなら、最初は中原(ちゅうげん)初(はじ)めて鹿(しか)を逐(お)い、でしたね、でも再考したのか還(ま)たに変えたはず、私はこの還(ま)たのほうが好きですが、長谷川司令官はやはり軍人ですね、この詩を呟くのですから」

 私は続けました。
「人生意気に感ずる、功名誰か復(ま)た論ぜぬ」
「勇壮な詩ですな、しかし私ぐらいの年になると、この言葉は不似合いですな、私は別の部分が好みです」

 この元近衛師団長さん、私は好きですよ。
 父親をほとんど知らない私としては、この人に父親のイメージがダブルのです。

「どの部分がお好みなのですか?」
「季布(きふ)二諾(にだく)無(な)く、侯えい(こうえい)一言(いちごん)を重(お)もんず」

 また通な部分を……侠客が好みそうです。

「ミコ様の行動も煎じ詰めれば、ここに行き着くのではありませんか?」
「たしかにそうかも知れません、言霊は力を持ちますから」

 そう、不用意な一言で私は女を抱き、その女のために戦うはめに陥る……

 中原 還た鹿を逐い……私は再び世界を救うために、いや抱いた女のために戦っている……

 このテラでの出来事は、エラムの規模こそ違え、そっくりのスケジュールではないか?

 何処かに、このような話があったような……
 日月神示……でしたか、雛形思想というか、内八洲(うちやしま)で起こったことは、投影されて外八洲(そとやしま)にも起こる……

 そんな話だったか……しかしなにか腑に落ちた様な気がします。
 そもそもパラレルワールドのテラ、何があっても不思議ではないのです。

 でも今は、その様なややこしい話は後にして、ナーキッドはユーラシアアジアに侵攻するのです。

 アメリカ戦線が片付いた今、私たちはアジアを支配しようとしているのです。
 アメリカのように、ナーキッドに従う国家を成立させることが目的です。

 アメリカは東部と西部、アラスカとハワイ、それにプエルトリコに分割しました、第四帝国、つまりNSM88は東部を支配しています、そのまま任せたのです。
 ナーキッドの命に従うことを条件にですが、エネルギーや食料も援助することにしました。

 カテゴリーとして、三級市民国家ですが、努力次第で二級には引き上げると言ってあります。
 一応献上品などを差し出されたのは、誰のさしがね……

 他のアメリカ諸国は、自ら国家を作るまで、国連の信託統治、アフリカも同様です。
 といっても、希望すればすぐに、ナーキッドに移管してくれそうですね……

 オセアニア地域は一部を除いて壊滅しています。
 例のスーパーボルケーノはニュージーランドにもあったのです。
 生き残った人々は、一旦オーストラリアのタスマニアに移住してもらって、ここはなんとか住めるようにしました。

 勿論このタスマニアは二級市民国家、南米と同じランク、そして元の土地を再開発してもらっています。

 残るはアジア、近東、中東、極東、南アジア……そしてアジアの最深部、自らロプノール共和国と称している国家……

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!

犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。 そして夢をみた。 日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。 その顔を見て目が覚めた。 なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。 数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。 幼少期、最初はツラい状況が続きます。 作者都合のゆるふわご都合設定です。 1日1話更新目指してます。 エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。 お楽しみ頂けたら幸いです。 *************** 2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます! 100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!! 2024年9月9日  お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます! 200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!! 2025年1月6日  お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております! ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします!

異世界の片隅で引き篭りたい少女。

月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!  見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに 初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、 さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。 生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。 世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。 なのに世界が私を放っておいてくれない。 自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。 それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ! 己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。 ※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。 ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。  

双子の姉は『勇者』ですが、弟の僕は『聖女』です。

ミアキス
ファンタジー
僕の名前はエレオノール。双子の姉はレオノーラ。 7歳の〖職業鑑定〗の日。 姉は『勇者』に、男の僕は何故か『聖女』になっていた。 何で男の僕が『聖女』っ!! 教会の神官様も驚いて倒れちゃったのに!! 姉さんは「よっし!勇者だー!!」って、大はしゃぎ。 聖剣エメルディアを手に、今日も叫びながら魔物退治に出かけてく。 「商売繁盛、ササもってこーい!!」って、叫びながら……。 姉は異世界転生したらしい。 僕は姉いわく、神様の配慮で、姉の記憶を必要な時に共有できるようにされてるらしい。 そんなことより、僕の職業変えてくださいっ!! 残念創造神の被害を被った少年の物語が始まる……。

「専門職に劣るからいらない」とパーティから追放された万能勇者、教育係として新人と組んだらヤベェ奴らだった。俺を追放した連中は自滅してるもよう

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「近接は戦士に劣って、魔法は魔法使いに劣って、回復は回復術師に劣る勇者とか、居ても邪魔なだけだ」  パーティを組んでBランク冒険者になったアンリ。  彼は世界でも稀有なる才能である、全てのスキルを使う事が出来るユニークスキル「オールラウンダー」の持ち主である。  彼は「オールラウンダー」を持つ者だけがなれる、全てのスキルに適性を持つ「勇者」職についていた。  あらゆるスキルを使いこなしていた彼だが、専門職に劣っているという理由でパーティを追放されてしまう。  元パーティメンバーから装備を奪われ、「アイツはパーティの金を盗んだ」と悪評を流された事により、誰も彼を受け入れてくれなかった。  孤児であるアンリは帰る場所などなく、途方にくれているとギルド職員から新人の教官になる提案をされる。 「誰も組んでくれないなら、新人を育て上げてパーティを組んだ方が良いかもな」  アンリには夢があった。かつて災害で家族を失い、自らも死ぬ寸前の所を助けてくれた冒険者に礼を言うという夢。  しかし助けてくれた冒険者が居る場所は、Sランク冒険者しか踏み入ることが許されない危険な土地。夢を叶えるためにはSランクになる必要があった。  誰もパーティを組んでくれないのなら、多少遠回りになるが、育て上げた新人とパーティを組みSランクを目指そう。  そう思い提案を受け、新人とパーティを組み心機一転を図るアンリ。だが彼の元に来た新人は。  モンスターに追いかけ回されて泣き出すタンク。  拳に攻撃魔法を乗せて戦う殴りマジシャン。  ケガに対して、気合いで治せと無茶振りをする体育会系ヒーラー。  どいつもこいつも一癖も二癖もある問題児に頭を抱えるアンリだが、彼は持ち前の万能っぷりで次々と問題を解決し、仲間たちとSランクを目指してランクを上げていった。  彼が新人教育に頭を抱える一方で、彼を追放したパーティは段々とパーティ崩壊の道を辿ることになる。彼らは気付いていなかった、アンリが近接、遠距離、補助、“それ以外”の全てを1人でこなしてくれていた事に。 ※ 人間、エルフ、獣人等の複数ヒロインのハーレム物です。 ※ 小説家になろうさんでも投稿しております。面白いと感じたらそちらもブクマや評価をしていただけると励みになります。 ※ イラストはどろねみ先生に描いて頂きました。

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

処理中です...