惑星エラムより愛をこめて 第四部 野良アンドロイド編 【ノーマル版】

第五十一章 征服戦争

バトルスーツ

「これより我々は南下をする、デヴォン島攻略は後回しだ、少数の部隊を抑えとして残置し、主力部隊は転進、フロリダより北上するナーキッドの主力を殲滅する、情報によれば指揮官はナーキッドのオーナーとの事、彼女を亡きものにすれば、北大西洋の海軍の敗北も相殺される」

「のこのこ出てきたのだ、ジャップの小娘をかわいがってやろうではないか！」

　長谷川司令官の反抗の前に、ラストバタリオンは転進を完了していたそうです。
　少数の残置されていた部隊を蹴散らして、溜飲を下げたと後でききました。

　ヴァンパイア軍団はゆっくりと進軍していきます。
　空中機動でも良いのですが、徒歩で進んでいます。
　奥の手は隠しておくものですからね。

　それにしても、このバトルスーツはすぐれものですね。
　油圧駆動式外骨格方式ですが、そこはマルスの技術、強化プラスチック製、ものすごく軽量なので、ひとりでも楽々装着できます。

　動力としては、ここでも太陽光発電衛星からの受電システムですが、動力がなくても、人の体内電流で動作します。
　受電システムが必要になるのは、武器の使用の場合です。

　もしもの場合に備えて、強力なバッテリーと、さらに非常用水電池も配布しています。
　単三程度の大きさですが、これで二時間ほど、武器を使用できます。
　さらに手に入れば、市販の単三電池も使えますが、こちらは二本で１０分程度ですが……

　このバトルスーツは、兵士一人で約１００キロは背負うことが可能ですし、頑丈この上なし。
　例えば６０トンクラスの戦車に引かれても、中の人間を守ります。

　メッシュ状の生地で作られており、それに外骨格が覆っている。
　足袋、手袋、ヘルメット付きの服と考えればいいでしょう、とにかく全身を覆っています。

　ささやかながら、空調装置もついていますが、用足しの時が弱点かも知れませんね。

　核の汚染地帯で用足しの場合など、防御しながらの場合は、穴を掘り、そこに生地を広げ、出来たら土などをかぶせ、はみ出している生地の端と、もう一枚の生地を腰に巻き、スカートのようにして、下の生地とつなぎあわせます。

　そして囲まれた空間を、付属の装置でスーツ内の空調と同調させ、やおら陰部を出して用を足す……
　非常に厄介な手順を踏むことになります。
　それでも戦闘中の場合は……まあ汚い話ですが、垂れ流し……だそうです。

　当然ＧＰＳもついていますし、暗視装置もあります、通信も可能です。
　その上、セットの武器が素晴らしいものです。

　一応銃ですよ……ただしです、九七式自動砲改、大昔の日本帝国陸軍の九七式自動砲、電動式で口径２０ミリ、初速７５０Ｍ秒の対戦車ライフルを大改良したものです。

　どこに電気がいるかというと、レールガンなのです。
　ほとんど反動はありません。
　その上初速は８０００Ｍ秒、当然のごとく有効射程は二万メートル以上となります。

　全自動制御ですし、スコープに対象を捉えれば、どんな強風などの外的要素があっても命中します。
　粘着榴弾ですが、通常の対戦車用の粘着榴弾ではありません。

　ナーキッドの粘着榴弾とは、粘着型振動破壊弾、例の海軍用の物の、空間転移をしないだけ、小型化されたもので、当たれば一発で、戦車など崩壊させてしまいます。

　このライフルは、グレネードランチャーをつければ榴散弾も撃てます。
　いわゆるキャニスター弾というやつで、対歩兵用です。

　信じられないことに、この九七式自動砲改、なんと着剣できます、２０６ＣＭもあるのですよ……バトルスーツだからできるのでしょうね。