惑星エラムより愛をこめて 第四部 野良アンドロイド編 【ノーマル版】

第五十章 ナーキッドの再介入

出陣

「そうそう、マスターの護衛も作りました、こちらです」
　マレーネさんがそう云うと、空間が歪み、その中より一匹の犬とは呼べぬものが出てきました。

　スピンクス……
　ギリシャ神話に出てくるのと同じで、ライオンの身体、美しい女性の顔と乳房のある胸、そして翼を持っています。
　エジプトのスフウィンクスとは違い、非常に優美です。

　そしてそのスピンクスは、口を開きました。
「マスターにお仕えすることになりました、スピンクスと申します」

　何といえばいいのか……でも猫のように可愛い。
　スリスリしてくるので、思わず頭を撫でてやりました。

「お察しの通り、『スピンクス』ですが、この者にたいしては、魔犬たちも従うはずです」
「また全てを空間転移させる能力を持っています」
「その気になれば、惑星を近傍のブラックホールへ投げ込むことも可能です」
　やれやれ、極めつけのものが出てきました、でも頼もしい……

「マスター、私は姿を変えることもできます、ご覧下さい」
　そういって、スピンクスは黒猫に変身、私の膝の上にポンと乗りました。
　魔猫？背中を撫でると気持ちよさそうです。

　でもこの魔犬軍団がいれば、ヴァンパイアさんたち、楽勝ではないのですかね……
　特にスピンクスの能力を使えば、ヴァンパイア軍団を瞬時に、機動運用できるではありませんか。

　軍議は長谷川司令官の指揮する、通称『近衛師団』は小笠原で待機、長谷川司令官自身は防衛司令官として、急遽デヴォン島に赴任となりました。
　エールさんとヴァルキュリヤチームも、陸戦ロボット部隊とともにデヴォン島に進駐して防備を固める手はずです。

　近衛師団はアメリカの戦乱に決着をつけたら、アジアに侵攻する手はずです。
　このままアメリカだけで済むとは思えません。

　そして８月の中旬、いよいよその日がやって来ました。
　朝食を取ろうとしていたその直前に、長谷川司令官から、アメリカ軍よりデヴォン島が核攻撃を受けたとの、緊急電が入りました。

　残り少ないだろうア、メリカ戦略空軍による核攻撃ですが、デヴォン島の防衛バリアは何事もありませんでした。
　しかしこれで心置きなく戦えそうです。

　この戦いを始めたのはアメリカ、叩きのめしても文句はないでしょう。
　そういう論法でしたよね、昔の日本との戦争は……

　ヴァンパイア軍団の兵力は約二万名、支族ごとに六個の戦闘団にわかれています。

　バハマのニュープロビデンス島の、難民収容施設に集結していますので、私たちの行動はわからないのかも知れませんる。

　北大西洋には、アメリカの機動部隊が遊弋しています。
　一応警戒しているのでしょうね。
　燃料、弾薬はなんとか生産しているようですね……

　でも彼らは忘れたのでしょうね、ネバダ州北部のブラックロック砂漠に、ワスプ級強襲揚陸艦の８番艦、マキン・アイランド以下の艦隊が、砂の上に浮かんでいるのを。

　思ったより艦艇が少ないですね、やはり有色人種を排除したのですから、人員不足なのでしょうね。
　でも中にニミッツ級を改良したと思われる、ジェラルド・Ｒ・フォードがあるのは少々驚きました。

　多分最新鋭艦でしょう、このような状態でも建造していたのでしょうね。
　しかしこのテラでは、原子力技術が発達していません、通常型になっています。
　これ一隻で、約４７００名の人員が必要です。

　スーパーホーネットを搭載しているようですが、まだＦ―３５Ｃは実用になっていないようです、しかもズムウォルト級ミサイル駆逐艦を二隻従えています。

　こいつの『ＡＧＳ １５５ｍｍ砲』は厄介ですね。
　なんせ射程は長射程対地攻撃弾使用で１１８キロ、まぁＧＰＳ衛星は破壊しますので、ＩＮＳ、つまり慣性航法装置に頼ることになりますので、そんなに問題はないでしょうか。

　空母はあと二隻、ニミッツ級がいました、ジョージ・Ｈ・Ｗ・ブッシュ　、ロナルド・レーガンです。
　三個の空母打撃群が編成されているわけですね。
　各々タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦が二隻、アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦が四隻ほどで艦隊を組んでいるようです。

　その他には沿海域戦闘艦のインディペンデンス、三胴船（トリマラン）のやつです。
　単胴のフリーダムもいるようですね。
　アメリカ級強襲揚陸艦も一隻います。

　潜水艦は改オハイオ級が六隻、誘導ミサイル潜水艦です、つまりトマホークをぶっ放す奴です。
　そのほかバージニア級潜水艦も三隻ほどいますね。
　これらの潜水艦群も通常型になっており、核技術が未発達なのか、核ミサイルが存在しません。

　このテラでの最新鋭の原子爆弾はインプロージョン型――爆縮方式――のものです。
　直径約１．５５メートル、長さ約３．２５メートル、重さ約３８５０キロの爆弾ですが、これをミサイル弾頭にはできないようです。

　まずはこの、アメリカ海軍の生き残りを無力化しましょうね。