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第五十章  ナーキッドの再介入

ラストバタリオンには血の杯で

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 アテネさんがやって来ました。
「イシュタル様、お供します」
 何も言っていないのに……
「長くご一緒してきたのですから、お考えはまるわかり、エラムの時のようには、出し抜けませんよ」

「そうですね、久しぶりに電撃杖を使うことになりそうです」
「私も小太刀を……」

「もし相手にアンドロイドが出てきたら、私が前にでます、彼らでは無理でしょう」
「特にイザナギの戦闘用アンドロイドだったら、それこそ陸戦ロボットでも無理となります」

「アテネさん、独鈷杵(ドクコショ)が必要ですよ、いつも悪いわね、危険なことばかりつきあわせて」
「いいえ、このアテネ、ジャバでイシュタル様に拾ってもらって、生命をいただきました」
「私はもともと剣奴、これが仕事なのです」

 アテネ……
「アテネ、私と貴女だけはもともと男、魂は戦うことを是とします」
「要らぬことはいいません、共に戦場にたって下さい、私の背中を預けます、もちろん貴女の背中は預かります」

 この時、私は完全に吉川洋人に戻っていた気がします。

「アテネ、出陣の前祝い、飯でも食いにいくか?」
 アテネさんがニヤッと笑って云いました。
「イシュタル様、負けませんよ」
「なんにせよ、主が負けるわけには行かない!出陣は明後日になるはず、アテネ、返り討ちにしてくれる」

 食堂にはヴァンパイア六支族の、軍団幹部が揃っていました。
「諸君、確定していないが、出陣は明後日になるはず、それまで英気を養ってくれ」
 カミーラさんも、ブラッドメアリーもいます。

「カミーラ、グラスを持って来なさい」
 怪訝そうに、カミーラさんがグラスを持って来ます。
 私は用意していた振武刀を引きぬいて、手首に当てました。
 刀身は赤く染まり、グラスに私の血が溜まっていきます。

 皆、息をのんでいます、カミーラさんなど卒倒しそうです。

 赤いグラスが目の前にあります、私は止血のイメージを発動します。
 みるみる血が止まり、手首の傷が跡形もなく消えます。

「カミーラ、貴女の造血装置を貸して下さい、ゾーイ、パンチグラスを持ってきて下さい」
 パンチグラスに私の血をいれ、カミーラの造血装置から血を足します。
 カミーラさんのものだけでは足りませんので、ゾーイさんや他のブラッドメアリーの面々の、造血装置からも血を足しました。

 ゾーイさんたちに、ここにいるヴァンパイアの人数分だけグラスを用意させ、パンチグラスの血を均等に入れます。
 まあグラスに半分ぐらいしか入りませんが、これを各人の前に並べさせました。
 ブラッドメアリーって、侍女も似合いそうですね。

「用意できました」
 カミーラさんが報告してくれます。

「諸君、私は諸君に差し上げられるものは、この身に流れる赤い血しかない、しかも申し訳ないが、量も少量である」
「諸君に死を賭して戦ってもらうのに、これでは物足りないやも知れない、許して欲しい」

「ヴラド・ドン族長、ここへ」
 ヴラド・ドンさんが私の前に膝をつきました。
「御前に」
 古風な云い方ですね、しかしかっこいいおじさんです。

「ヴァンパイア族の代表として、貴方にこの刀を授けます」
「私を守る良き殿方に授けているもので、貴方が三人目です」
「私の血をすった刀、ヴァンパイア族には最適でしょう」
「では乾杯の音頭でもとってくれますか」

 ヴラド・ドンさんが、
「諸君、ヴァンパイア族は、永遠にルシファー様に忠誠を尽くすことを誓うものとする」
「恐れ多くもルシファー様の血を頂いたのだ、御前で屍を晒すことこそ我らが名誉、いざ死ねや諸君!」

「ルシファー様のために」
「おぉ!」

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