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第四十七章 山荘予言
エウローペーをその手に
しおりを挟むその航路を、船がリバプールへ向けて出港して行きます。
そして鉄道に乗り、イギリスの田園風景などを眺めながら、ドーバーの海底トンネルを抜けパリへ、さらにローマへ向けて、幾つもの鉄路を乗り継ぎました。
列車の中と駅だけでしたが、概ね西欧地域は無事です。
ドイツなど中欧なども、危惧するほどの事はありません。
一応は国家が機能していますし、ナーキッドの数々の援助も入っています。
人々も南へ行けば行くほど、危機感が薄くなっているのが懸念材料ではありますが、このまま収まってくれたら……
「うまくいっているようですね……南米もそれなりに落ち着いていますし、ヨーロッパもこのまま行ければ……」
「ブレンダさん、思ったよりは良い状態で安心しましたよ」
「そうでもありませんよ、南欧では犯罪組織がのさばってやりたい放題です」
「この間など、臓器の密売組織が明るみにでたくらいです」
ローマ、すべての道はローマですか……
この地が保存できなくなったら、マルスへ持って行こうかしら……いまの私なら、マレーネさんの手を煩わせなくても……
ユリウス五世聖下は私を待っていてくれたようで、サン・ピエトロ広場付近の、私の宿泊場所へお迎えがきました。
某所で会談です。
「お元気そうで何よりです」
「ありがとうございます、聖下におかれては、すこしおやつれに……」
おやつれどころか、心労でお倒れになるのでは……雰囲気があります。
「ご慧眼を隠されるな、この老いぼれ、召される日は近いと知っております」
「……」
「人類をお救い頂き、感謝しております、しかし残りし者の事を思うと、なんともいえない気持ちになります」
「しかし見てきたところ、南米と欧州の中核部はなんとか存続できそうですが……」
「シャルル枢機卿から報告がありました、超人(ユーベルメッシュ)を見つけられたとか?」
あの枢機卿……なんでもペラペラと……ご老人に心労をかけさせてなんとするのか!
私が心のなかで毒づいていると、
「ナチスの計画は聞いておりました、貴女が超人(ユーベルメッシュ)と認めた以上は、真実なのでしょう」
「ここにその昔、総統がよこした書簡があります」
私はアドルフの書簡を見せてもらいました。
色々な要求や脅しが羅列されていますが、その終わりのほうに、このような記述がありました。
私には未来がみえる、私の中にいる『あいつ』がそれを見せてくれた。
テラは愚かな大衆政治のお陰で、判断を誤りついには世界の終末を呼び寄せる。
たしかにあなた達のいうハルマゲドンは、近未来に起こる、しかしキリストは来ない。
やってくるのは別の救世主、神人(ゴッドメンシュ)、この者がテラを救う、人類の進化の芽、超人(ユーベルメッシュ)たちを育て新世界に導く……
あなた達はその時、進化に取り残された者共の、お守りをすることになる……
しかし超人(ユーベルメッシュ)以外に、本当の最後の審判がやってくる、全てはその時、神人(ゴッドメンシュ)が判断することななる……
「……」
「こうして読み返すと、アドルフの予言の正しさが嫌でも理解できます」
「その書簡によれば、本当の最後の審判はまだこのあとにやってくる……」
「私は愚かな人々と共にあります、しかし救う力はない……あるのは貴女だけ」
ここでユリウス五世聖下は私の手を取りました……
「愛しいエウローペーを……その手に委ねます」
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