惑星エラムより愛をこめて 第四部 野良アンドロイド編 【ノーマル版】

ミスター愛妻

文字の大きさ
上 下
9 / 125
第四十六章 南米

ゴミをゴミ箱にかたづけて

しおりを挟む

 ホテルに戻ったのは深夜です、中では大騒動をしていましたね。
「オーナーは何処へ行った!」
 背の高い、細面ですが目が大きい、見るからに才媛のように見える女性が怒鳴っています。

 ホテルのナイトマネージャーが吊るしあげを喰っていますし、従業員がおろおろしているのに同情します。

「私をお探しですか?」

 !

 何処から湧いて出たのか、その様な顔をしていますね、この方は。

「貴女は?」
「フェルナンダ・モタといいます、国連の事務局の者で、ナーキッドオーナーのお世話をする者です」
「それはご苦労さまです、この深夜になにかご用ですか?」

「いえ……」
「まぁ事情は理解しています、そうホテルの方々を怒鳴るのはおやめくださいな」
「散歩していたのですよ、夜の空気を吸いたくてね」

「この深夜にですか!」
「そうですよ、4時間ほどフラフラと、周辺のファヴェーラをね」

 !

「事務官さんにお願いですが、ゴミを散らかしてきたので、明日片付けてくださいな」

 睨むように私を見つめて、フェルナンダさんが聞きました。
「ゴミって!」
「麻薬売りとその関係ですよ、決まっているでしょう」
「まさか……」

「多分思っていることでしょう
「世界を救うために、多大な犠牲と労力を支払ったのです
「その上で、麻薬売りがのさばるのを、許すわけにはいきません」

「一人残らずゴミにしてあげました」
「貴女はゴミをゴミ箱にかたづけてくださいね」

「構成員には女子供もいたはずですが……」
「私にはその様な差別はありません、罪があるかないか、それだけです」
「罪あれば、たとえ五歳の子供でも、罰は受けなければならない、拳銃の引き金は引けるのですから」

「貴女にそのような権利があるのですか!」
「ありますよ、法的にも、私はテラの絶対統治権を持っています」
「人々が生きるも死ぬも私の判断です、その事は理解しているでしょう?」
「それが世界を救う事の代価でしたからね」

「何様なのですか!」
「支配者ですよ、それ以外の何物でもありません」
「神罰が怖くないのですか!」

「貴女、カトリックなのですね」
「貴女の思う神というのは『ゴッド』でしょうが、私の愛人の一人は名をエール、長きに渡りテラを見守っていた者、その者は『ゴッド』を否定していますよ」

「しかし、このテラには、確かに神は居られます」
「その神は私に、テラを身捨てよと、おっしゃいました」

「神罰といわれるなら、神の子ではない、テラの傲慢な人々を救った私に落ちるのであり、ゴミをかたずけたことに対して、落ちるわけではありません」
「むしろ褒められるでしょうね」

「……」
「とにかく明日、手配してくださいね、出来ないなら申し出て下さい、私がかたづけます」

 次の日、私は朝食を食べているところへ、フェルナンダさんがやってきました。
 綺麗なお顔が真っ青です。

「死体が累々と転がっていました、なんでもレディ・ジャスティがやって来たとか……」
「あのような惨劇の後なのに、住民が生き生きとしていました」
 それはそうでしょう、利己特性を遺伝子レベルで操作削除したのですから、あるがままを受け入れる下地が出来ていますから。

「まぁ食事でも一緒に食べませんか?」
「いえ、とても食欲などありません」
「ではコーヒーでもいかが?」
「コーヒーぐらいなら……」

 沈黙……

「ミコ様、昨日は失礼いたしました……」
「正常な反応だとおもいますよ、人としては当然でしょう」

「……」
「それより、聞きたい事があってきたのでしょう、構いませんよ」
「隠す事はありませんし、貴女はベラベラ喋るようには見えませんから、答えられる事は答えますよ、なんですか?」

「……神は……人々を見限ったのでしょうか?」
「神にとって子とは、『自らの段階まで進化出来る存在』をさすのではないでしょうか?」

「人は胎児なのでしょう、子と呼べるほどに、進化出来る可能性を秘めた胎児を助け、可能性を自ら放棄した者には、怒りが落ちる……」
「チャンスは公平に与えられ、それを掴めない者は見限る、『蒼ざめた馬に乗った第四の騎士』は現れているのですよ」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

レディース異世界満喫禄

日の丸
ファンタジー
〇城県のレディース輝夜の総長篠原連は18才で死んでしまう。 その死に方があまりな死に方だったので運命神の1人に異世界におくられることに。 その世界で出会う仲間と様々な体験をたのしむ!!

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

聖女なのに婚約破棄した上に辺境へ追放? ショックで前世を思い出し、魔法で電化製品を再現出来るようになって快適なので、もう戻りません。

向原 行人
ファンタジー
土の聖女と呼ばれる土魔法を極めた私、セシリアは婚約者である第二王子から婚約破棄を言い渡された上に、王宮を追放されて辺境の地へ飛ばされてしまった。 とりあえず、辺境の地でも何とか生きていくしかないと思った物の、着いた先は家どころか人すら居ない場所だった。 こんな所でどうすれば良いのと、ショックで頭が真っ白になった瞬間、突然前世の――日本の某家電量販店の販売員として働いていた記憶が蘇る。 土魔法で家や畑を作り、具現化魔法で家電製品を再現し……あれ? 王宮暮らしより遥かに快適なんですけど! 一方、王宮での私がしていた仕事を出来る者が居ないらしく、戻って来いと言われるけど、モフモフな動物さんたちと一緒に快適で幸せに暮らして居るので、お断りします。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ
ファンタジー
とある乙女ゲームの世界で目覚めたのは、原作を知らない一人の少女。 産まれた時点で本来あるべき道筋を外れてしまっていた彼女は、知らない世界でどう生き抜くのか。 母の愛情、突然の別れ、事故からの死亡扱いで目覚めた場所はゴミ捨て場、 捨てる神あれば拾う神あり? 人の温かさに触れて成長する少女に再び訪れる試練。 そして、本来のヒロインが現れない世界ではどんな未来が訪れるのか。 主人公が7歳になる頃までは平和、ホノボノが続きます。 ダークファンタジーになる予定でしたが、主人公ヴィオの天真爛漫キャラに ダーク要素は少なめとなっております。 同作品を『小説を読もう』『カクヨム』でも配信中。カクヨム先行となっております。 追いつくまで しばらくの間 0時、12時の一日2話更新予定 作者 非常に豆腐マインドですので、悪意あるコメントは削除しますので悪しからず。

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜

みおな
ファンタジー
 私の名前は、瀬尾あかり。 37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。  そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。  今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。  それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。  そして、目覚めた時ー

その選択、必ず後悔することになりますよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ベルナール殿下、陛下、妃殿下、第2第3王子殿下。ご自身にとって都合が悪いからと、わたくし聖女ファニーの殺害を企まれていますよね?  ただちにお止めください。  このまま実行してしまいますと、貴方がたは激しく後悔する羽目になりますよ。  ※こちらはファンタジージャンルとなっておりますので、ファンタジー的な存在(異形)が登場する場面がございます。

処理中です...