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第九章 困った方です

『ボーイ』はイザナギに恋をした?

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 ミコさん、小さく薄い霧のようなものを両手で包み込み、
「ヒルコ、私に従え、お前は従う事しかできない、そして遥かな昔のように、アスラのしもべとなれ!」

「私には選択が許されないのですね」
 幽かな呟きが聞こえます。

「許されない、従え、私が汝の主だ!」
「……主よ……ご命令を……」
 
「ヒルコ、汝は私の何なのか?」
「……奴隷でございます……」

「身体を返してあげましょう、実体化しなさい」
 実体化してくれましたが、裸ですね……お茶を飲んでいた時には、なにか服など纏っていたような……

 カウナケス――古代オリエントのひだのついたロングスカートのようなもの――ではなかったですね、あれは私の趣味ではありませんが、右肩をだしたサリーのような衣装でしたね。
 胸があまりありませんね……ウエストもそれほど……幼児体型ですね、髪は刈り上げているし……

 ボーイッシュな顔立ち……よく見れば幼い雰囲気もありますが美形ですよ。
 髪を伸ばして、女らしくすれば、間違いなく美女でしょう。

 まぁイザナミさんの娘ですからね、美しいにきまっていますが、胸がね、その上ウエストもヒップもね。
 でもアンダーヘアーは薄く短く、下向きで逆三角形。

 ……これって温和で従順、受動的で、下向きですから異性運が悪い、その上、短いですから同性愛の傾向もある……確かに男に自由にされたとはいえますね。

 手を胸のあたりに組んで、挨拶をしてくれました。
「綺麗ですね」といいますと、
「お上手ですね、私は未成熟だったのです」
「だからあるじ様たちは、私を捨てろとイザナミ様に命じられたのです」
「未成熟?」

「この身体です、本来私は『ボーイ』の試作品として製造されました」
「『ボーイ』とは、女性体に仕える力仕事を担当するアンドロイドの事です」

「しかし『ボーイ』は不評でした、力仕事はロボットがすればよい」
「『ボーイ』ですから、私には女性体の特徴はありません、女性体の世界では異質、目障りな存在となったのです」

「廃棄と決定しましたが、イザナミ様がイザナギ様に譲渡するという事で、主を説得して下さったのです」

「私から見ると別に未成熟とは思いませんが」

「いえ、未成熟ということで、私は棄てられたのです、しかしイザナミ様には感謝しています」
「イザナギ様に譲渡して下さったのですから……最愛の主、私の全てでした」

 なるほどね……ある意味、恋愛の対象だったのでしょうね……少女は頼もしいおじさまにあこがれる……
 でもね、イザナギはイザナミを愛していた……
 貴女の入る隙はなかったでしょうね……

 あわれな……抱いてしまいましょうか……愛したいより、愛された方がベストでしょうね……
 このヒルコさんのイレギュラーは進んでいるようで、自我が発生しているようです。

 自らをどうしていいかわからず、孤独に怯えている子供のような存在、誰かに愛され、孤独ではないと信じさせる必要があります。

 でなければ早い段階で、自傷しそうですね。
 ヒルコさんは、もはや生体なのでしょう。
 思考回路が論理性を失っています……

 どうせ今回の事で、私が女を拾ってくるのは、サリーさんもある程度はあきらめているでしょうし、この際、ひと時サンドバッグになればおさまるでしょうね……

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