76 / 124
第十章 隠匿の大聖女様
お見合いじゃないわよね!
しおりを挟むオリエッタ王妃様についていくと、王宮内の一室にたどり着きました。
「ここよ♪ジルドいる?」
王妃様、ノックもせずにドアなんてあけるのです。
「いますが母上、ノックぐらいしてくれませんか?」
「いえね、紹介したい女性がいてね」
「お見合いは結構です!」
「今回は違うわ、勧めないわよ」
「珍しいこともあるのですね」
「母としては、ジルドが口説いてくれれば嬉しいけど、貴方では落とせないわね」
王妃様、露骨に徴発しています。
話の内容から、相手はオリエッタ王妃様の息子さん、ベネット王国の王太子でしょうね……
「エマさんたち、お入りなさいな」
王妃様、息子さんの承諾なんて聞かずに、勝手に私たちを呼びます。
「失礼します」
「ジルド、この方たちは旅のパン屋さんたち、クレマン宰相宛のバンベルク大主教の紹介状をもってこられたのよ」
「バンベルク大主教の?」
「そうよ♪こちらがエマさん、ご実家は元カペー王国ルルー子爵家、カペー王国王太子婚約者だった方よ♪とても綺麗でしょう?」
「このお二人はエマさんの使用人、こちらがクロエさん、元カペー王妃付きの女官さん、ご実家は準男爵家♪」
「この方はフレイヤさん、エマさんの使用人で、元スコーネ公国戦士、楯の乙女よ♪」
「この子は私の息子、ジルドよ♪王太子なの」
「貴方、シルミ村の視察に出るのでしょう?この方たちもシルミ村へ行かれるの、だから同行してあげて?」
「私が?」
「そう、貴方が」
「それは……父上の?」
「そうよ」
「……分かりました……が、私は12時半に出ますので、近衛連隊前の広場でお待ち願えませんか?」
近衛連隊前って、王宮内にありますよね。
「申し訳ありません、お忙しいのに」
「いえ、いいのです、母は強引ですから、エマさんたちは押し切られたのでしょう」
「あとは若い者同士で打ち合わせしてね♪じゃあ私も忙しいからこれでね♪」
えっ、王妃様、どこ行くのよ!
……
「あの……ジルド様、私どもの馬車は、このフレイヤの『回転車輪』魔法で動かしております、行軍速度は大丈夫でしょうか?」
「急ぐこともないので合わせよう、シルミまでは1日、どのみちどこかに泊まる、遅く着き早く出ればいいだけだ」
「ところでフレイヤ殿というのか?貴女の『回転車輪』魔法、馬車を牽くことが出来るか?」
「荷物と道路状況によりますが、2台ぐらいなら牽くことができます」
「では1台、荷馬車を牽いてくれると助かる、道はかなり良いから大丈夫と思う」
「分かりました、1台ぐらいなら」
「助かる、馬の調子が悪くてね、牽かせるのは忍びなかったのだ」
……
「ところでエマさん、その……カペーの王太子と婚約していたとか……好ましく……思われていたのか?」
「いえ、嫌いでしたが、家の関係で断れなくて、正直な所、清々しています」
「そうか!」
……
「ジルド様、私どもも出立の準備がありますので、これで失礼します」
……
「そうか、では12時半までに近衛連隊前の広場に来てくれ」
ジルド殿下の執務室を出たのは12時前、やれやれ……
退室すると、待ってましたとばかりクロエさんが、
「エマ様、王妃様、あきらめたとか云われておられましたが、殿下の妻に押し付ける気満々でしたね」
「そうね……困ったわ……」
「殿下、エマ様を見て驚かれておられましたね、その後の視線の熱い事♪」
「そうなの?きずかなかったわ」
ニヤニヤしながらクロエさんが、
「エマ様、嘘が下手ですね♪きずいていらっしゃったのでしょう?」
ここでフレイヤさんが、
「私でも分かる、ご主人様はなかなか席を立たなかった、何時ものご主人様なら、最初の沈黙で、『出立の準備』を口にされるはず」
「フレイヤさんも思ったのね、さっきのエマ様、おかしかった物ね♪」
「エマ様、殿下の事、まんざらでもないのでは?」
「私にはクロエとフレイヤがいます!」
クロエさんが、
「別に私たちは『愛人』で良いですよ♪エマ様が殿下の正妻になられるなら、正妻が女の『愛人』を持つ話は、よくある話ですから♪」
とんでもない話を聞きましたが、良く調べてみると……
君主の正妻というのは、政略結婚の場合が多々あり、あまり離婚などしないらしい……
愛が醒める、またはもともと愛情がない……当然、夫は外に側室、妾、愛人などより取り見取り……
孤閨の正妻は寂しい……そして、この世界は女性同士の結婚なども可能な世界、周りは女ばかり……
離婚話になるよりは、妻のストレス発散の為の『愛人』なら、目をつぶってもよい……子は出来ないですからね。
つまり、私が殿下の正妻に収まるなら、今のままの関係は可能?という事らしいのです。
140
お気に入りに追加
352
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる