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第十章 隠匿の大聖女様
素顔のエマさん
しおりを挟む「ところで、つかぬことを聞くのですが、エマさん、本当にエマさんなの、どうもなにか変なのよね」
「どういうことですか?」
「いえね、綺麗でかわいい娘さんに見えるけど、なにかすっきりとしないのよ、『もや』がかかっているというか……違っていたら、ごめんなさいね……」
ああ、なるほど……『認識偽装』をそのままにしていましたね……
「忘れていました……神様から私の容姿が、いらぬことを引き起こすので、『もや』をかける力をいただいていたのです、それを入れっぱなしでした、素顔をさらしておりませんでした」
解除を意識すると……
「意味が分かるわ……傾国の美女、いや美少女……馬鹿な男が馬鹿になりそうね……」
「『もや』は必要ね……」
「クロエ、フレイヤ、ごめんなさいね、今の今まで本当に忘れていたのよ……」
唖然としていた2人に、頭を下げているエマさんです。
クロエさんが、
「でも、そのお力のおかげで、カペーの馬鹿王子から逃げれたわけですね♪神様はお見通しだったのですね♪」
フレイヤさんが、
「ご主人様は神々しいほどお綺麗で……お仕えするのにあたり、時々ご尊顔をお見せ願えないかと……」
「そうよね、3人だけでお風呂に入った時なんて、素顔で入るわ♪夜もね♪」
オリエッタ王妃様が、
「私も時々、素顔であってね、今の今まで息子の嫁にと思っていたけど、これは無理ね、そもそもエマさん、人の嫁は難しいかもしれないわよ」
クロエさんが、
「エマ様は神様の娘、大聖女様、釣り合う男はいないかと……」
「そうなのですか……人並みの幸せなんて、思うときがあるのですが……」
えっ、何言っているの?男に抱かれる?おぞましいわよ!
「エマさんも娘さんということね、でも何度も言うけど、難しいわよ……」
「お似合いの相手というと、神話に出てくる『上帝』ぐらいしか、思いつかないわね」
「でも王妃様、神話に出てくる『上帝』って大聖女を妻にして、その上にあちこちの女をものにしたのですよ」
「精力絶倫で子供を一杯作って、その子孫が各国の王家の租になったとあります、果たしてお似合いなのでしょう?」
「いわれればそうよね、ならやはりお似合いの男はいないわよね、そうなると……『お似合いの女』なら……貴女たちは『エマさんの女』なのでしょう?」
「そうです」
2人とも胸を張っています。
「正式な婚姻は挙げたの?」
エマさんが、
「まだですが、必ず上げます」
「エマ様……」
「結婚ではなくて婚姻よね、なら妾という事ね」
「女同士なので、正式に結婚は貴族以上の方しかできません、私たちは貴族の出ではありませんので、不可能と理解しております」
クロエさんは、カペー王妃付きの女官さんですが、ご実家は準男爵家、準貴族の一番上ですが、貴族のカテゴリーではないのです。
フレイヤさんは女傭兵上り……
「エマさんのご実家は元カペー王国ルルー子爵家、貴族に入るので結婚出来るのよね……」
なにか考え込んでいるオリエッタ王妃様でした。
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