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第十章 隠匿の大聖女様

ラスボス、オリエッタ王妃様

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「とにかくだ、エマ様には大聖女というのは隠していただきたい、目立たぬようにしていただければ幸いである」
「7神の上におられる神、アヌに仕える至高聖職者、大聖女様がご降臨なされていると知られると、7神を崇める各教団はパニックになる」

「ゴトーネース帝国、カペー王国、そしてこのベネットはマルドゥク神を主神とする地域、このベネットに創造神たる至高の天空の神、アヌ神に仕える大聖女様がご降臨なされたということは、このベネットがマルドゥク神に仕える地域の盟主となる」

「ただでさえカペーとは険悪の間柄なのに、ゴトーネースもカペーに肩入れすれば、ゆゆしきことになる」

「そこでです、私が思うに、エマ様には、先に亡くなられた陛下の姉君のお化粧領の村で、ささやかにパン屋などなされれば、問題はないと考えます」
「このことはエマ様の御了承をいただいております」

「それにエマ様は、あのカペーの王太子の元婚約者、マルタン侯爵家養女であられ、出身はカペー王国のルルー子爵家長女であられます」
「その方が理不尽に婚約を破棄され、『還らずの森』に追放され、必死の思いでこれを踏破なされて、このベネットを頼ってこられた」
「国王陛下は度量をお示しになられ、亡くなられた陛下の姉君のお化粧領の村に住まうことをお許しになされた」

「私は称号が見えますが、今の話は称号をみればわかります」

「それなら、問題は無かろうが、エマ様はあのカペーの馬鹿王子と婚約なされていたのか?」
「はい、婚約中なので伽を命じられたのですが、断りましたら、婚約破棄、国外追放になりました」

「前から思っていたが、あいつはとことん馬鹿のようだな、マルタン侯爵家はなにも云わなかったのか?」
「マルタン侯爵様は、王子に献上するために養ってやったのにと云われ、親でも子でもないといわれました」

「マルタン侯爵はカペーの宰相ではないか……なんとも呆れてものが言えぬな……そんな小物がカペーの宰相か……」
「馬鹿王子が王位について、マルタンが宰相のままなら、カペーは終わりかもしれぬな……」

「デーン王国あたりが、攻め込むかもしれませんな、そうなったらゴトーネースも兵をだすでしょう、2者で分割占領となりますな」
「カペーとは国境を接しておらぬが、その場合はゴトーネースに助力するしかないな」
「しかし、いくら何でもあの馬鹿は廃嫡だろうて……」

「あの……きな臭いお話をされているようですが、そのようなお話は別のところで……」
「おお、そうであった、大聖女様の前でつまらぬ話を、失礼した」

「そうですよ、見ればまだ娘さんですよ、お菓子とかお化粧とかの話ならいざ知らず、そんな話はよそですべきでしょう」
 ここで初めて王妃様が口をはさみました。

「まったく!ジョスリーヌもついていながら何ですか!クレマンなら、このような話になるのは見えていたでしょう、さっさと切り上げる段取りをしなさいな」

「陛下、段取りは決まったのですから、後は私が引き取ります、さあ、エマ様、こちらへ、お付きの2人も来なさい、ジョスリーヌはとりあえず館に帰りなさい、マリアンヌは治していただいたのでしょうから、辺境伯にこの話をしなくてはならないでしょう?」

「でもわかっているでしょうね、エマ様はカペーの王太子の元婚約者で、旅商人になって、ロンバルまでやってきた、いいですね」
「貴女の事ですから、このあたりのことは上手く考えているでしょうが、口裏は合わせるのよ」

「あの……王妃様、どうかエマと呼び捨てにしていただけませんか……でなければ、居心地が悪くて……」
「そうなの、なら遠慮なくね、エマさん、私はオリエッタ、よろしくね♪」

「さあ、こんな煙草臭い部屋から逃げましょう、国王陛下、よろしいでしょう」
「おっ、そうだな、あとは頼む」

 どうやら、大阪のおばちゃん軍団の、『ラスボス』が現れたようです……

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