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第九章 激動の王都ロンバル第一日
大聖女は神の知識をお持ち
しおりを挟む「ところで、陛下はいまお食事中か?」
「ここへ来る前に、お食事を用意したところですので、そろそろかと……」
「そうか、ならこのパンを差し上げていただけぬか、これが1ランドでなら、さぞかし興味をひかれるだろう」
「構わぬであろう、エマさん」
「それは……宰相様のお考えのままに……」
料理長さん、恭しく、私たちの為に、お料理を運んできたお皿にパンをいくつかのせて、メイドさんたちと共に退室されます。
夕食を食べていますが、あまり楽しい食事ではありませんね……
そろそろ、まずいのでは……危険予知は何も言いませんが、これは逃げたほうがいいのでは……
「警戒は無用ですよ、悪いようにはしませんから、ただお逃げになられてはいささか困りますので、カルロッタ、ドアの前で警戒してくれぬか」
カルロッタさん、私の方をチラッとみて、黙ってドアの前に立ちましたね。
「ただ、このロンバルでの商売は、先ほど料理長が云ったように、いささか困る、かといって、出来るならば聖女様にはベネットにご滞在願いたい」
「そこで考えたのだが、ロンバル近郊の村で、商売をされてはいかがかと考えたのだ」
「そのためには王の許可がいる、なんせその村は、今は亡き王の姉君の、お化粧領だった村だからな」
「では、兄上はあのシルミ村にとお考えなのですか?」
ジョスリーヌ様、思い当たるようです。
「良い考えだろう?ベネット一の温泉保養地、風光明媚なガル湖のほとり、聖女様にお住みいただくには最高の場所と考える」
「クレマン様!そのような話は!」
慌てたエマさんでしたが、
「カルロッタは口が堅い、さっき何かあったら命がけで聖女様を守ろうとしていたようだ、察するにカルロッタの病、聖女様がお治しになったのであろう?」
「という事は、カルロッタはエマ様が聖女であると知っているはず、なら、ここから先の話は聞かれても構わないと判断できる」
「もっとも、久しぶりに会ったときに、なんとなくカルロッタが、忠誠を示しているように思えたがな」
「カルロッタ、良かったな、いろいろ苦労したようだが、ルキーノと仲良く所帯を持ち、このガサツな妹を守ってやってくれ」
「はっ!」
あぁぁぁ、このクレマン様、私なんかよりも、役者が何枚も上……ジョスリーヌ様といい、この兄妹にかかわった時点で、負けが確定しているわね……
「負けました、降参です、クロエとフレイヤと3人で、のんびり暮らせれば後はまかせます」
「先ほども申しましたように、悪いようには致しませんよ」
この時、ドアがノックされます。
「カルロッタ、ドアを開けてくれ」
侍従らしき方が入ってきて、
「国王陛下と王妃様のお成りです」
さすがのクレマン様も慌てておられました。
ずかずかと、威厳たっぷりのイケメン中年の男が入ってきて、
「クレマン、食事中に押しかけて悪いな、そちがとんでもないパンをくれたので、持ち込んだ商人が帰る前に話を聞こうと思ってな」
「おお、ジョスリーヌもおるのか?息災かな?」
「はい、陛下」
「その方が、このパンを持ち込んだ商人か?」
えっ、王様に直に答えていいの?
「お答えしてください」
クレマン様がこそっとね……
「旅商人のエマと申します、宰相様宛の、バンベルク大主教様の紹介状をいただきましたので、商業許可証をいただけないかとお訪ねし、商品のパンをお見せしていたところです」
「この白パン、1ランドらしいが、この商品はロンバルで売るのはまかりならん、さすがにパニックになりかねない」
「しかしバンベルク大主教の紹介状を無下に出来ぬ」
「そのことで、陛下にご相談があります、いささか人払いをお願いします」
「そのほうら、すこし席を外してくれ」
「これでいいかな」
「ありがとうございます、実はこちらのエマ様は大聖女であらせられます」
!
「本当か?」
「加護には聖女とありますが、そのほかに、『エンサイクルペディア所持者』とか『危険予知』とか、初見の物が見受けられます」
「『エンサイクルペディア所持者』……そうか……」
あれ、この王様、『エンサイクルペディア所持者』で思い当たることがありそうですね……
「王家に伝わる図書があるのだが、その中にそのような文言がある……」
「神の知識と書かれている……そして大聖女は神の知識をお持ちであると……」
「大聖女……神話にある神に仕える至高聖職者、この世界には創世記に1人だけ存在した、その方が今ここにおられるのか……」
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