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第五章 ヴィーナス様のお散歩

地獄が口を開くぞ……

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 『お散歩』のために、マハラバード軍港を出港したのは二隻の練習巡洋艦と十二隻の一等輸送艦で構成される第二揚陸艦隊。

 一等輸送艦は特務艦特型と呼ばれており、基準排水量1500トン、速力22ノット、後部のスロープを利用して機雷を34個、または回天を八隻を積めるようです。
 今回は全艦回天を積んでいました。

 この回天は四型改と呼ばれるもので、遠隔操縦魚雷です。
 四型を非常識なほど改良されています。

 司令塔などはありません、無線操縦装置が内臓されており、頭上の偵察衛星からリモートするわけです。

 人が乗っていた部分には炸薬が増量されており、機関部なども信頼性のあるものに改良、エンジンは電気モーターで発電衛星より受電します。

 悪天候でも問題なく受電できます、深度は20メートル程度ですが、速度は40ノットを超えますし、頑丈に出来ており、特々の最大速力でも放り込めるのです。

 当たれば一発で、戦艦クラスも撃沈できます。

 『お散歩』のための艦隊は、のんびりと西に向かいます。
 旗艦『かしい』の士官候補生の部屋は、アプサラス・ハレムの女が陣取って、毎晩、軍艦にはありえない声が響いています。

「パールヴァティ、腰の使い方が上手いわね♪」

「アプサラスもラクシュミーも、アールヴヘイムンの女はご奉仕に命を掛けています!」

「そうね、王国がかかっていますからね……」

「……」

「まぁ、おいしいパールヴァティのために、何とかしなくてはね、色々な世界を救ってきましたが、アールヴヘイムンは厄介ですからね」

「ヴァルホルのように徹底的に叩きのめした後ならね……男性体の培養した戦士種族、若造のように暴発する、中途半端に占領したのが、間違いだったのでしょうが……かといって最終解決案はね……努力してみましょう……」

 最後のほうは、自分に言い聞かせているようなヴィーナスさんでした。

「パールヴァティ、時がきたら十四王国の女は、無慈悲にいただきますよ」

 その頃、スジャータさんは十四王国の情勢に変化があったことをつかんでいました。

 ……マーヒシマティー王が退位させられ、弟が即位したのか……目論見どおりということか……
 スジャータさん、驚きもしません。

 ……西方の六王国は、どうやらアールヴヘイムン条約加盟に前向きだな、われわれが何もしないと踏んでいるのだろう……
 あわよくば撤退か……愚かな、地獄が口を開くぞ……

「USー3不死鳥の全機は、出撃準備を整えよ、新開発の機雷をつめるだけつんでおくように」

 先ごろUSー3不死鳥は56機体制となり、新開発の機雷を敷設できるようになったのです。
 Mk60キャプター機雷を改良したもので、USー3不死鳥はこれを投下できます。

 ホーミング短魚雷が組み込まれた魚雷発射管のようなもので、推進音に反応して射出する優れもの、執政官府だけが装備しているものです。

 ……あとは条約側の宣戦布告を待つのみ……挑発をしましょうか……

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