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第六十四章 資産減少大作戦?

給与と賞与 其の1

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 要望元は、信じられないのですが、文部省……

 要望の要旨は、

 帝都では、女性専用宿泊施設がない、しかし、女学校についての打ち合わせなどで、女性にしか理解できない事例もあり、どうしても女性教員を帝都に呼ぶことが増えている。

 先日、このような女性教員が、宿泊所で襲われかけるという事例が発生した。
 以来、宿泊施設は治安のよい高級ホテルを利用させることになったが、男性教員の宿泊との格差が甚だしい。
 かといって、圧倒的に打ち合わせに来るのは男性で、それを高級ホテルに宿泊させるのは予算の都合上、不可能となる。

 帝都の二つの街、『女高師前』電停地区と、『聖女御用邸前』電停地区は、陸軍の徹底的な巡邏が実施されており、極めて治安が良い。
 そこで、青鞜会が運営を始めるという、『閲覧個室棟』の宿泊施設部分のような、女性専用宿泊施設を経営していただきたい。

「どうしましょうか?」
「『聖女青鞜局』の見解に従いましょう」

 聖女青鞜局の見解は、要望を受け入れるべし、との返事でした。
 計画書まで付いているのですよ。

 『帝都婦人宿泊施設計画概要』

 『女高師前』電停地区と、『聖女御用邸前』電停地区に、約30人宿泊可能の婦人専用簡易宿泊施設をおのおの1棟建てる。
 文部省は用地を提供、人員は女官未婚退官者を、年季明けの青鞜会補助職員とする。

 青鞜会施設として税金の低減処置を求める。

 青鞜会が準備している矩形兵舎型を宿泊施設、円形兵舎を食堂、及び風呂、便所、宿泊事務室とする。
 クリーニングや食材は青鞜会出入り業者とする。

「ねえ、真希子様、『女官未婚退官者を、年季明けの青鞜会補助職員』というのは?」
「出来ればお気に入りになり、お手付きをということです、これからの青鞜会の人員不足にも対応できます」

「でも、青鞜会を女官さんたちの退官後の、再就職先にするの?」
「あからさまに申し上げると、そうなります……」

「帝室女官嘱託ではないの?」
「帝室女官嘱託は、私が云うのも変なのですが、能力を認められた女官の再雇用という意味です」
「一般女官の中には、相手も決まらずに定年退官するものが多々いるのです」

「なら、こうしませんか?女官退官者は希望すれば青鞜会雇員とし、宮殿女官で在職中に、『青鞜実科高女』を卒業した未婚者は、年季明けの青鞜会補助職員とする」
「さらに青鞜会雇員にも、賞与を支給するのはどうですか?」

 青鞜会は基本的に月給の12倍を賞与対象とし、これを16で割り、賞与対象とし、1.5倍、つまり月給の1.125倍を夏と冬に支給しています、これに評価が加算されますが、賞与対象の2倍が上限です。
 この上に特別賞与がありますが、これは幹部職員会で決めます。

 この賞与、雇員及び見習いには支給されませんが、雇員に対しては、冬に賞与対象と同額を支給するというものです。

「やはり資産を減らすには人件費!」

 とはいっても無茶は出来ません、世間がまあ納得する範囲でとなります。

 青鞜会の給与は陸軍兵士の給与に連動しています。
 概ね、その半分という薄給……

 2等兵の給与はお米13.24キロが買える……

 雇員さんは、青鞜会補助職員の再雇用とし、一旦退職されたときの給与、陸軍伍長の半分とします。
 陸軍伍長は2等兵の給与の2.33倍、つまりお米が30.849キロ買えるのです。

 サラリーマンの平均世帯月収は陸軍伍長の5.05倍。
 お米が155.788キロ買えることになります。

 陸軍伍長に対する国家支給分を、このサラリーマン世帯に当てはめると、推測ですが65パーセントに該当、これを引くと、お米は54.526キロ、さらにこの世帯は3.9人、1人当たりお米は13.981キロ。

 青鞜会雇員は陸軍伍長の給与の半分、15.425キロ。
 賞与は同じと仮定……
 あれ、薄給とは言えませんね……

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