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第六十二章 年始は帝国で慰問に精を出す 後編
四辻閑子は、実は恋する乙女
しおりを挟む四辻閑子は二十二歳、華族高女を卒業後、帝国第二女子高等師範学校に進学した才媛で、卒業後さらに勉学に励もうと、第一帝国文理科大学に見事合格……
帝国文理科大学は戦前の日本の学制とは違い、明確に高等師範学校とは別組織、高等師範学校の上位校、女子高等師範学校からの受験も認めています。
女子教育としては、女子の受験を認めている第三帝国大学についで、第一帝国文理科大学、第二帝国文理科大学の3校が、女性に『学士』を授けられる教育機関です。
女高師合格というのが大変なのに、その上となるとね……帝国文理科大学でも毎年数名程度、第三帝国大学なんて女子の合格が1人もいないなんて年もあるようです。
「姉さん、皇后様から、明日参内せよと通達がありました、また何かしでかしたのですか?」
「なにもしておりません!きっと結婚の話よ!断るわ!」
「姉さん、もう嫁ぐ相手がいませんよ!もしお見合い話なら、文句言わずに嫁いでくださいませんか?」
「嫌よ!」
「どのような相手なら承諾なされるのですか?女ですか?四辻家としては、それは不可ですよ!それなりの家の正妻になってもらわなければ、我が家が笑われます」
「どのような相手でも嫌よ、私は学問がしたいのよ!」
「生涯、独身でいいのよ!」
「もう……とにかく明日は参内してくださいよ!」
プリプリ怒って、部屋に戻った姉を見ながら、
「才色兼備、申し分ないのだが……あんなに気が強い姉を貰ってくれる、奇特な男がいるのだろうか……」
四辻公爵の思いは、四辻の家のすべての者の思いのようです。
翌日、朝からお迎えの馬車が四辻邸に……
慌てて乗り込んだ閑子さん、そのまま、宮殿の奥、皇帝陛下の執務室まで通されました。
「よく来てくれた、四辻閑子、頼みがある」
「何なりとお申しつけ下さい……」
皇后様に呼ばれたはずなのに……
「聖女を知っておるか?」
「存じております、一度垣間見たことがございます」
「どこで?」
「華族高女のバザーで、卒業生として顔を出した時に……」
「そうか、なら話は早い、聖女に仕えてもらいたい」
「私がですか?」
「命じても良いが、それでは聖女が嫌がるのは確実でな、よく考えて返事して貰いたい」
「後は皇后に話を聞いてくれ」
その後、女官が皇后の部屋に案内します。
「よく来ましたわね、この娘は知っているわよね」
「衣笠俔子様……お久しぶりね、確か聖女様にお仕えしていると伺っておりますが」
「お久しぶりです、閑子お姉様」
「陛下から聞いているわよね、断ってもらったら困るのだけど、貴女は断らないと思っているのよ」
「雪乃のところにいったら、そのまま第一帝国文理科大学に通えると思うわよ、雪乃、そのあたりは寛容、というより勧めてくれるわよ」
「教師になりたいのでしょう?卒業したら、青鞜会で教師になればいいのではありませんか?」
「雪乃の所の牧野姉妹は元教師、そういえば姉の愛さんは第一帝国文理科大学卒業だったわ」
「しかし、聖女様は皇太子殿下の正妻になられると伺っております、すると私は殿下にお仕えすることになり、殿下がそのような事をお許しになるとは思えませんが」
「それは大丈夫と思うわ、息子は胃袋もナニも、雪乃にしっかり掴まれているから、可愛い顔して雪乃、凄いのよ、ねえ俔子さん」
「そうですわ♪雪乃様は聖女で……」
その後の言葉を皇后様が引き取り、
「世界の知恵を統べる大賢者でもあるのよ、学問をしたいと云っていたわね、雪乃に可愛がっていただければ、分からないことは教えてもらえると思うわよ」
「陛下も私も無理強いはしないわ、でも無駄なことも避けたいのよね、脈が絶対ないというなら、ここまでの話でも良いわ、どうなの?」
ここで皇后様、閑子さんが頬を少しばかり染めたのを見逃さなかったのです。
「分かったわ、いい難いでしょうから、この年寄りが段取りするわね♪」
「皇后様、私は……」
「いいのよ、胸の内はわかったわ、貴女は私に命じられて、渋々とすればいいのよ、帝国貴族の娘で、婚約を命じられたら、建前上断れないですからね、聖女に仕えろと陛下と私が問答無用で命じたのよ」
「……ありがとう、ございます……お任せいたします……」
この後、衣笠俔子さんより、雪乃さんのことを、あれこれ聞いた閑子さん、ついでに皇后様も聞いていました。
「雪乃、綺麗な顔して、凄いのね♪」
「愛人の数が、『聖女青鞜局』の見解では、資産からして35名は絶対と聞いていたから、さすがに皇太子も大丈夫かしらと思っていたけど、雪乃が女たちの官能を発散させてくれそうね♪」
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