老後のおかしなおかしな女学生生活 転生二年目

第六十章 年末は王国で慰問に忙しく 後編

続・王宮で

「聖女様、こうして王国の方々に正式にご紹介できることになり、祝着に存じます」
「ありがとうございます、王妃様に置かれましては、私のお願いにより、王国青鞜会名誉総裁についていただき、心より感謝申し上げます」

　一応外交辞令など交わして、アレクサンドラ王妃様が、
「昨日の聖女様の『恋心事件』は周知のとおりです」

「しかし王国は聖女様のお側に『王女御』を送り出せるが、またお側にお仕えする女性は数少ない、ここにいるレディの方はそのあたりをよくご理解してほしい」
　なんともまあ、ストレートな王妃様のお言葉です……
　
　えっ、返事をするの？

「私はマリア様、ダイアナ様、クラリッサ様、ルイーズ様、ローラ様、カトリーナ様、そしてシンディー様と、多くの王国女性の方々と『親しく』させていただいております」
「皆様、優美で賢才、王国女性の素晴らしさに感銘を受けるばかりです、私はこの素晴らしい女性たちの故郷、王国の繁栄と人々の安らぎを、日々神様に願っております」

「私の生まれは帝国ですが、何かのおりに着ております儀礼服には、２つのブローチ、帝国の紋章『フルール・ド・リス』と王国の紋章『テューダー・ローズ』を常に身に着けております」

「私の両親は亡くなっておりますが、母とも思う方は帝国皇后様と王国王妃様、父と慕う方は帝国皇帝陛下と王国国王陛下、どうか皆様におかれましては、私と私に仕えてくださる女性のことを心に隅に留め置かれまして、両国の平和をお願いいたします」

　おや、拍手がありますね、まあ、儀礼的な拍手でしょうね……あれ？鳴りやまないのですが？

「聖女様に神のご加護を！」
　誰かが叫んでおられます……

「聖女様に神のご加護を！王国に永久の繁栄を！」
　多くの方が叫んでおられますが……

　この後、食事となり、晩さん会は終わったのですね……
　でも、お綺麗なご令嬢を山ほど紹介されました。

「雪乃様、鼻の下が伸びておられませんか？さすがにああまで露骨に言い寄るとは！いささか腹立たしいというか……」
　珍しくダイアナ様が角を出しておられます。

「そうね！ポッター公爵家のアナベルさんなんて、すごかったわね！あの方、おとなしい方と思っていたけど……」
　マリア様も言葉に棘があります。

　へいぜいはこんなことで動じないのですが、さすがにすごかったですからね……
　お腹を減らした肉食獣の群れの中に、放り込まれた感じがしました……

　控室でほっこりしていると、女官さんが呼びに来られます。

「聖女様、王女様方、国王陛下と王妃様がお呼びです」

　やれやれ、本日最後のお仕事？ですね……

「ご苦労様でした、話を合わせてもらって助かったわ♪」
　アレクサンドラ王妃様が労ってくださりました。

「それにしても、雪乃さんのスピーチの後の、皆の拍手と喝采は驚いたぞ、最初に言葉を発したのは誰だったか……たしかポッター公だったな……」
「ポッター公は西方貴族のリーダー、娘を『女御』に押し込みたいのだろうな……」
「まあ雪乃さんが、記者会見でああまでのろけたおかげで、嫁にとか面倒なことを言ってくるものがいなくなったのは助かった」

「でも陛下、正直あそこまで、娘さんたちがアピールするとは驚きました、アナベルさんですか、すごかったですわね！」
「見ていたが、何時もの雰囲気とは違っていたな、上の息子を披露した時は静かなものだったが……」

「雪乃さんの『恋心事件』の影響でしょう♪これから王国の女は、積極的になる者も出てくるでしょうね♪」

「まあ、それはそうと、マリア、ダイアナ、息災のようだな、元気そうな顔を見て、父として嬉しいぞ」
「しばらくはおるのであろう？ゆっくりしていけ」

「ダイアナ、貴女のお母さまは亡くなっておられるけど、私は貴女の母のつもりよ、ゆっくりしていくのよ」
「王妃様……」

　頃合いとみた雪乃さん、お暇したわけです。