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第五十二章 青鞜の商品
宿題は検閲されるのよ!
しおりを挟む夏休みも終わり、今日は二学期初めて登校しますと……クラスメートの幾人かが、『婚約』したようで、『婚約の儀』について、盛り上がっています。
つまり、『許嫁のナニにご挨拶』の話を堂々としているのです……
思わず聞き耳なんて立てている雪乃さんです。
「●◇様、お尻は差し上げたのですか?」
「はい♪『ご挨拶』の後、望まれましたので♪」
所変わればですが、なにかおかしいこの会話……
「うらやましいですわ♪お相手って××財閥のご一族の方でしょう?」
「ええ、まあ……」
なんて言いながら、エンゲージリングをさりげなく、見せているのですよ……
それなりのダイヤモンドがキラキラと……高そうですね。
「挙式は来年になるの、それで皆様と机を並べるのは、今年限りとなるのは、少し寂しいわ」
「じゃあ、高等小学校卒業資格でご結婚なのですね」
「そうなるわ♪私、そんなに綺麗でもないし、『卒業面』になりそうで、内心ビクビクしていたのよ♪正直、ホットしたわ♪」
この方、それなりに美しいのにね、『卒業面』って、そんなに気になるのかしら?
雪乃さん、そんなことを思っていると、
「雪乃様はいいですわね♪皇太子殿下と『お付き合い中』とか、世間ではもっぱらの噂ですわ」
突然、話をふられたのです。
「お聞きした話では、皇太子殿下が頻繁に『帝室聖女御用邸』に寄られるとか、『通い婚』と云われてますよ」
「でも、お相手が雪乃様ですから、そりゃあ皇太子殿下もご熱心に寄られると思いますよ」
「ご婚約は確定していると、●●新聞に書かれていましたが、本当なのですか?」
「貴女、雪乃様がお困りになるようなことを聞いてはいけないわ」
「そうよ、互いに思っていても、時期があるのよ、皇太子殿下と聖女殿下のご婚約なのよ」
「雲の上の方々は大変ですね、『結婚しよう』、『はい』とはいかないようですね」
そこで、始業のベルがなりました、新学期の初めの始業式です。
生徒が着席すると、職員が着席、礼をして、ここで国歌斉唱……
「皆さん、今日から二学期、夏休みに婚約などされた方も幾人かおられますが、『浮かれた気持ち』は捨てて下さい!」
校長先生の長々とした『講話』を拝聴し、校歌を唱和して始業式は終わり、引き続き教室に戻り、そのままホームルームです。
「皆さまにお知らせがありますが、本クラスの春野加代さんが、夏休み中にご家庭の事情で退学なされました」
「では、宿題を提出していただきます」
宿題ってのは、第一高女が監修して作らせた、『夏季休暇学習日記』と銘打ったノートのようなものです。
一日一ページ、復習問題が書かれており、下にその日の天候と三行ほどの簡単な日記の欄があります。
ただね……簡単な日記といってもね……
『王国、国王陛下と会見』とか、『帝国皇太子殿下と会食』とか……非常にまずい気がしますので、真希子様にお伺いすると……
日記欄は全て黒塗り、その横に『記載不可、聖女青鞜局』という、ハンコが押されてしまいました。
このハンコも急遽作ったようですよ。
ちなみにダイアナ様は『記載不可、王国青鞜局』いう、ハンコが押されてしまいました。
シンディー様と、真希子様が協議して決めたようです。
『帝室聖女御用邸』の女で、学校に通うものは、全員この検閲を受けさせられました。
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