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第四十二章 七夕にナニを祈るの
帝室の女官さんたちの食事
しおりを挟む『星祭り』は、宮殿としては直接祝うわけではありませんが、毎年短冊を飾る竹は用意しているようです。
女官さんたちは、各自、願いを短冊に書いて、ささやかに星に祈るわけです。
しかし今年は皇后様のお声係りで、急遽直近の土曜の夜から、月曜の朝まで、女官さんたちは臨時の休暇となったのです。
特に土曜の夜は皆で大々的に前夜祭を行うことになったのですね。
急遽、特別に『索餅』というお菓子と、『そうめん』を夕食に追加、宮殿のシェフが対応することになり、それで夕食が遅れて七時からになったと、女官さんたちに伝えられました。
忙しそうに、高位の女官たちが、バタバタと何かを運んでいるようなのですが、何をしているのかは一般の女官には知らされていないのです。
「私どもも、お手伝いを致しましょうか?」
ある女官が、忙しそうにしている『えらい女官』さんにおずおず申し出ると、
「いいのよ、貴女達は席に座って、願い事を短冊に書いていればいいわ♪」
そうこうしていると、皇太后様がやってこられました。
「皇太后様、ニコニコされておられるけど、なにかいい事でもあったのかしら?」
なにも知らない女官さんたち、ひそひそと話しています。
「皇后様と武子様がいらっしゃったわ、あれ、お側にいる方、雪乃様では?」
ここで、『星祭り』の準備の陣頭指揮をしていた『えらい女官』さんが、
「皆さん、今年の『星祭り』は、『聖女岩倉姫宮雪乃王女殿下』と『帝室聖女御用邸』の方々も参加なされます」
「『聖女岩倉姫宮雪乃王女殿下』から、『御菓子』と『御夜食』をいただきました、特に『御菓子』の中のプリンは、小さいですが雪乃様のお手製です、400名分を自らお作りになられたのです」
「雪乃様がこれでは少し少ないと考えられ、残りのお菓子と、お寿司を急遽、ポケットマネーで取り寄せられものです、心していただいてください」
「帝室からも皆を慰労するために、今より月曜の朝まで休暇となりました、そしてこの前夜祭のために、特別に『索餅』というお菓子と、『そうめん』を夕食に追加されました」
「なお飲み物もカジュアルですが、ワインやシャンパンなども帝室より差し入れされています、今夜は女だけの、ささやかな『星祭り』の宴を楽しむように」
「また、『索餅』は『神饌』ですので、いただく前に、必ず神様に心の中で感謝し、捧げてください、そしてしばらくしてから、いただくように」
帝室の女官さんたちの夕食とは、案外に質素なのです。
本日の予定されていた夕食のおかずは、『豚のカツレツ』と『胡瓜もみ』、それに『お漬け物』、これでも節句なので、少し豪華なのです。
主菜、副菜、副々菜の三菜、汁物として『万年スープの澄まし』というものがついています。
一応、夕食のご飯は『白ご飯』なのですよ♪
『万年スープ』――安価滋養食品料理法、小出新次郎 著、大正十一年出版 のなかに記述があります――というものは、野菜くずなどを棄てずに、煮てうまみを出したもののようです。
毎日どうやら継ぎ足しているようで、朝の味噌汁などのベースになるようです。
これを利用して、醤油とか、生姜とかで味付けして、具としてネギなどを少しばかりいれて、提供しているようです。
ちなみに今日の朝の献立は『豆腐の味噌汁』と『お漬け物』、ご飯は少し麦が入っています。
このお味噌汁はかなりの具沢山、おかずの代わりなのですよね。
昼は『油揚と切荒布(きりあらめ)煮付け』と、これまた『万年スープの澄まし』と『佃煮』と、朝と同じ少し麦が入っているご飯。
副々菜は『お漬け物』か『佃煮』というわけです。
ご飯と副々菜、そして汁物の『万年スープの澄まし』はお代わり自由なのですね。
本日はこの夕食に『そうめん』が追加されたわけです。
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