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第三十五章 五月晴れの下で『おいも』が喜ばれる?

遠足前夜のお食事

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 五月になり、まず遠足があります。
 四年生は修学旅行、明日から一週間も予定されているのですね。
 準備に余念が無い洋子様です。

「洋子様、修学旅行はどこへ行かれるのですか?」
「それが……凄いのですよ♪海峡の向こうなのです♪」
「海峡の向こうって、帝国領の『瑠璃』のこと?」
「はい♪」

「海峡を渡るだけですけどね♪」
 ハイテンションですよね……そりゃあ、そうですよね。

 『瑠璃』というのは海峡の向こう側にある、共和国に食い込んでいる小さな領土です。
 概ね、海峡というのはジブラルタル海峡を想像すれば、当たらずとも遠からず。
 この両側を帝国は領土として支配しているわけです。

 この海峡は大きな『チラス海』という内海の東の果て、帝国領の最西端です。
 『チラス海』の西側は結構開いていますが、真ん中に群島があり、王国領となっています。

 この帝国領の『瑠璃』あたりを北回帰線が通っており、かなり暖かく、観光地としても有名なのです。
 『瑠璃』は帝国領ではありますが、かなり共和国の文化が根付いており、町並みも共和国のようです。
 『瑠璃』と共和国の国境は、現在開かれておりますが厳重なチェックがあります。
 
「1番人気の新婚旅行先なのですよ♪」
「去年はどこでしたっけ?」
「たしか『古都』でした、毎年、『古都』なのですが、今年は初めての『瑠璃』なのです♪」

 なんでも今年は『瑠璃』の町が、成立してから500年とかで、瑠璃商工会が修学旅行に補助金を出したのです。
 さしてお金持ちでもない、『帝国第一高女』生徒のご家庭の旅費積立金でも、旅行できるのです。

「私たちの時は『古都』なのでしょうね……羨ましい……」

「雪乃様たち二年生の遠足は、どこですの?」
「たしか帝都を流れる川の、上流の町、『河越』とか……たしか今年は五年生も一緒と聞いています」

「ああ、聞いたことがあります、確か『おいも』と『うなぎ』が有名だそうですよ」
「うなぎ♪いいですわ♪私、『うなぎ』、大好きなの♪」
「このあたりでは『天然うなぎ』は五月からですから、上手くいけば『天然うなぎ』が食べられるかも知れませんね」

 帝国では養鰻業は繁盛しているようですからね、帝都ではいつでも食べられるのですが、やはり『天然うなぎ』を食べたいですよね。

 でも無理でしょうね、お弁当を持っていくらしいですから、また歩くのではないですかね。
 去年は確か片道5キロ、往復10キロ歩かされましたから。

 でも、『うなぎ』……『天然うなぎ』でなくてもいいから……

 あぁ、頭の中で『うなぎ』がぐるぐるするわ……作ろうかしら……
 でも、『うなぎ』は高いし……贅沢よね……

 『鰯の蒲焼き丼』なら、いくらでもね……ついでですから、『ナスの蒲焼き丼』、『ちくわの蒲焼き丼』……
 『うなぎ』は少し買って、炊き込みご飯に……

 そうそう、『う巻き』の代わりに、蒲焼きのたれで卵焼き……

 遠足は明後日の五月三日、洋子様は明日出発……
 今日は水曜日ですが、授業が終わったら、鰻丼もどきの夕ご飯にしましょう♪
 
 小さい小丼で、3種の蒲焼き丼とうなぎの炊き込みご飯。
 小皿に蒲焼きのたれで卵焼き、そしてタコの酢の物。
 汁物として、わかめと豆腐のすまし汁。
 後は香の物、奈良漬けです。

 結構頑張って作ったのですよ♪

「あれ、案外に美味しいですね♪」
「このうなぎをけちった炊き込みご飯、いけますね♪」
 
「でも、単価は安いですね♪特に私は『鰯の蒲焼き丼』が美味しいです」
「いま、ナスは旬ではありませんので、もう少し出回りだしたら安く出来ると思いますよ」

「でも、雪乃様なら『うなぎ』位いくらでも買えるでしょうに、なぜこのような物を?」
「性分でしょうね、どうも根っからケチなのでしょうね、ご飯が食べられなくなるのが怖いのでしょう……それに美味しい物はたまに食べるから美味しいのですしね♪」

 前世、お金がなくて、ひもじい思いをした時もありますし……あの時は、お金がなくて、三日ほど薄いおかゆでしのいだりしてね……
 まあ、水だけと云うことはなかったですが、一人で生きてやると啖呵を切って見たものの、惨めな生活が続きました。

 生きていれば、何なりある物ですが、若いときは惨めさが嫌で、がむしゃらに働いたのですよ……
 お陰でそれなりに成功しましたが、それだけでしたね……
 とにかく、身を慎まなくてはね、さもないと、節目の時にチャンスという『はずみ車』を逆に押してしまう……
  
 美味しい物や贅沢な物は、それなりの理由があるときに食べるもの……そう思うことにしているのですよ。
 
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