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第五章 ルイーズの物語 極東旅行
フランスのティータイム
しおりを挟む寺山千代女とお春は、オーサカホテルの一室で、ただじっとイスに座っていました。
トントンとノックされたので、寺山千代女がドアを開けますと、ルイーズ・ドルレアンが立っていました。
千代女はどうすれば良いのか分りません。
最もお春も同様で、固まっています。
そもそも言葉が通じるとは、思えないのです。
「お茶でもご一緒いたしませんか?」
と、完璧な日本語です。
「ありがとうございます」
と返事しますと、
「ではまいりましょう、皆まっています」
で、寺山千代女とお春はおずおずしながら、ついて行きます。
オーサカホテルのティールームに、三人の女が待っていました。
大きなテーブルの周りには、立派なイスが六脚用意されていました。
「ようこそ、セパレイティスト・クラブへ、私たちはアリアンロッド様の公妾、格子、コンパニオンです」
「従って貴女たちの言葉、日本の言葉に不自由はしません、だから安心して、お国の言葉で喋っていただいてよいですよ」
と、マーガレット王女が、歓迎の言葉を日本語でいいました。
驚愕する寺山千代女とお春に、
「多分貴女たちはコンパニオンの下、ガヴァネス、女孺(にょじゅ)となると思います」
「私たちは先ほど、お二人と仲良くなりたいと話し合っていました」
「それで親睦と自己紹介を兼ねて、お茶でもご一緒にと、招待した次第です」
「私はエカチェリーナ・アレクサンドロヴナ、ロシアの大公女です」
「私はアリソン・ベル、アメリカ人よ」
「私はマーガレット・ハノーバー、イギリス王女です」
「最後は私ね、ルイーズ・ドルレアン、フランス第三帝国内の自治領、オルレアネー王国王女となるのかしら」
目の前の女たちは、とんでもない高貴な女たちと、寺山千代女とお春にも理解できました。
「私は寺山千代女と申します、播磨の国の龍野藩(たつのはん)の出身で、父は藩の寺社方でした」
「私は春と申します、播磨の佐用の近く平福の出身で、家は因幡街道の旅籠をやっていました」
お春さん、宿屋の娘さんだったのですね。
「今日はアリアンロッド様からいただいた、お茶でも飲みませんか、フランスのお茶ですが良いでしょう?」
とルイーズ・ドルレアンさん。
それを受けてマーガレットさんが、
「うらやましいわ、私もアリアンロッド様からお茶をいただきたいわ」
ルイーズがホテルのボーイさんに、マリアージュフレール社の茶葉、定番のマルコポーロ、フランス流のあっさりとした入れ方をと、頼んだルイーズさんです。
この当時には存在しないブレンドですが、アリアンロッドさんの知識には存在し、再現できるようなのです。
「フランスのお茶には、やはりフランスのお菓子ということで、これもいただいたの……」
マドレーヌやチョコレートがでてきました。
どうやら全て、マリアージュフレール社のもののようです。
「アリアンロッド様は、このようなお菓子がすきとおっしゃっていらしたわ」
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