上 下
23 / 43
第三章 ネマの物語 『栄光のほうこくまる』

決戦に生き残り

しおりを挟む
 敵艦隊の直衛駆逐艦は8隻だけ、巡洋艦はいないようです。

 増援部隊と会合して、艦隊陣形を整えたネマ船長は、三式指揮連絡機に100キロ『オクタニトロキュバン』爆弾を積み増せ、300キロの遠方から航空攻撃を命じました。
 頭上の通信衛星からの誘導がありますので、陸軍機の三式指揮連絡機でも難なく、海洋を飛べるのです。

 「とにかく波状攻撃をしてくれ、直衛駆逐艦が全滅したら戦艦の測距儀などを破壊してくれ」

 ネマ船長の命令で波状攻撃をした結果、直衛駆逐艦は全滅、四隻の戦艦の測距儀は破壊、水平装甲板以外の艦首部分は穴だらけ、煙突なども壊された船もあります。
 とくにドレッドノートの速力はぐっと落ち、12ノットほどしか出ていないようです。
 三式指揮連絡機部隊は爆弾をすべて消費して、この結果を出してくれたのです。

 特設巡洋艦6隻は単縦陣で敵の戦艦に立ち向かいました。
 距離は三万メートル、まず命中する距離です。

「右舷水雷戦用意!」
「目標、第一部隊は敵の一番艦、第二部隊は敵の二番艦、撃て!」
 12発の魚雷が二隻の戦艦に命中、いわゆる轟沈したのです。

「回頭、左舷水雷戦用意!」
「目標、第一部隊は敵の三番艦、第二部隊は敵の四番艦、撃て!」

 敵の四隻の戦艦は海の藻屑となったようです。

「右舷に雷跡2!」
「なに!」
「回避運動はできるか!」
「まにあいません!」
「命中します!」

「右舷に被雷!」
「左舷に注水!」

 “ほうこくまる”は速力が半減、大量の浸水でやっと浮いている状態です。

「“ごこくまる”が被雷!傾いています!」
「敵の位置はわかるか!」
「わかります!」

「全艦艇に位置を知らせよ!」
「対潜誘導魚雷をありったけ叩き込め!」

「敵潜、圧壊しました!」

「やれやれ……被害状況を報告せよ!」
「浸水がとまりません!」
「排水に全力を上げろ、とにかく全速でマハラバードへ向かう!」
「対潜警戒を怠るな!」

 度重なる被雷で隔壁が緩んだそうで、浸水が止まらない“ほうこくまる”です。
 それでも応急注排水装置の、排水能力のおかげでマハラバード港まで、なんとか戻ってきたのです。

 緊急にドックに入ったときには、応急注排水装置も壊れ、満身創痍の“ほうこくまる”でした。  

 “ほうこくまる”の修理は困難を極めたのですが、義勇艦隊の武勲艦として、何とか修理を終わったときは、執政官府の戦争は終わっていたのです。

 『栄光のほうこくまる』、義勇艦隊の誇り。
 この船はこの後、どんなに旧式艦となっても、義勇艦隊旗艦として現役にとどまりました。

 そしてネマ船長はのちに義勇艦隊司令官になり、最後は側女にまでなったのです。

 FIN
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

性転換マッサージ

廣瀬純一
SF
性転換マッサージに通う人々の話

ヴィーナスの女たち 第二短編集 リバーボート 【ノーマル版】

ミスター愛妻
ファンタジー
 別の宇宙 ある恒星の第二番惑星、パリス連合王国宰相の孫娘アンジェリカは大河ユーコンを遡上する川船プリンセス・ユーコン号の船上にいたが……初めてのユーコンクルーズでお友達が出来たが……  アンジェリカの物語 リバーボート など、の六つの物語を拾い集めた、惑星エラムシリーズのスピンオフ第二短編集。  ミッドナイト様に投稿しているもののR18仕様を修正【ノーマル版】としFC2様に投稿しているものです。  表紙画像は ウィリアム・ブグロー Evening Moo パブリックドメインです。

朝起きたら女体化してました

たいが
恋愛
主人公の早乙女駿、朝起きると体が... ⚠誤字脱字等、めちゃくちゃあります

性転換マッサージ2

廣瀬純一
ファンタジー
性転換マッサージに通う夫婦の話

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

ヴィーナスの女たち 第三短編集 シュードラ島奇譚 【ノーマル版】

ミスター愛妻
ファンタジー
 別の宇宙 ある恒星の第二番惑星  レムリア都市同盟は孤立無援、何とか国土を広げ、国力をつけたい……そこで宰相のフリードリッヒは未知の世界に雄飛することにしたのだが……  シュードラ島奇譚 など六つの物語を拾い集めた、惑星エラムシリーズのスピンオフ第三短編集  ミッドナイト様に投稿しているもののR18仕様を修正【ノーマル版】としFC2様に投稿しているものです。  表紙画像は ウィリアム・ブグロー Evening Moo パブリックドメインです。

処理中です...