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エピローグ 百年後の世界

第六天魔王で悪いの?

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 造化三神はどのような犠牲を払っても、高等知性体の存続を望まれている……
 その目的は私には解らない、しかし存続の為に私を作り上げた……

 まずは欲界の中で<欲望を制御しながら、滅亡を私に阻止させている。
 そのための代価を、女たちの人生で支払わせている。
 私も含めて……

 因果律が必然的に男の滅亡を促し、そして残りし女も、活力を失い衰退滅亡する……
 いまこの法則が綻びつつあります。

 有機体アンドロイド種族は、少なくとも不老ですし、女だけでも、活力を失わない世界が成立しかけています。
 原因はありますが、結果は永遠のその先です。

 そうなのでしょうね……

 ふと見ると、ドリスさんが、私にぺったりくっついています。
 官能に上気した顔をしています。

「幸せを感じるって、この事?」
「はぁ……ぁぁぁ……イシュタル様……幸せ……感じる……」
 なんせ百年使い込まれた身体、ドリスさん、すぐにいってしまいます。

「イシュタル様……今度は私が、お慰めいたしますわ……」
 ドリスさん、蛇のように身体をくねらせて……
 このごろ、うまいですからね……声が出ましたよ……

「ドリスさん、そういえば貴女の星の治安は変わらない?」
「治安は劇的に良くなってから、あまり変わりません」
「住民は魔法が使えませんし……執政官府には怖がって寄って来ません」
「それに事務官の方々が優秀ですし、私はこうしたい、ああしたいと、希望を述べるだけです」

 ドリスさんのことは、惑星世界管理局長からも報告が来ていましたね。

「そういえばエラムに戻られるのでは?」
「そうなの、新しい女官さんたちの挨拶を受けるの」
「イシュタル様も大変ですね」

「でも、ドリスの頃のような貧しさはなくなったわね、大陸横断馬車鉄道も、今では馬車がなくなりましたし」
「イシュタル様のお陰で、今や女官といえば、学生みたいなもの、マルスの実業女学校とそっくり、もっとも半日はびっちりと仕事ですけどね」

 そうなのです、エラムの女官制度も、まぁ基本的には奴隷ではありますが、学校に無料で通えるただひとつの道、希望者が殺到しています。
 勿論ハレムの女に変わりはないので、侍女としての躾、閨の技術……など……徹底的に仕込まれます。

 卒業後は幾年か働いて、自らの代価を支払い、退官するわけです。
 出来たら『格子』さんになれればと、皆望んでいますので、それは大変なお色気攻勢を受けます。

 今のところエラムの男は健在です。
 テラほど衰退していません。
 エラムは平和になったといえど、あちこちで争いやいさかいがあり、いまだ男性優位の社会体制なのです。

 他の惑星世界も、マルスとまではいきませんが、せめてエラム当たりで、落ち着いて欲しいものです。
 欲界の下層である、『四大王衆天(しだいおうしゅてん)』に手をかけているのがエラムの世界。

 私の預かる25の宇宙にある、数えきれない世界をせめて、六欲天の第一天までと思っているのです。

 明日はエラムへ帰るつもりです。
 私はエラムへ嫁いだ女です。
 嫁ぎ先こそ、私の居場所でもあるのです。

 私は第六天魔王になろうと思いました。
 この世界の思い、その幸せを私の幸せとし、そして幸せを望む……欲望と呼ぶなら呼べばいい……

 私は母の形見といわれている手鏡を取り出しました。
 この永き年、私は手鏡とハーモニカを肌身離さず持っています。

 そして手鏡には別の物が映っていました……
 吉川洋人と吉川ミコ……
 確信しました。

 私の父と母の姿なのでしょうね。
 二人の神は本当に常に側にいてくれたのです……

 そして父のハーモニカが歌い始めました……

 ヴァルナの娘……疲れたら神の国へ来たれ、遥かなるカタカムナへと……

惑星エラムより愛を込めて FIN

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