40 / 127
第二十三章 ウマイ
畏怖
しおりを挟む馬は……どうしたの?
「アイヌルさん、テングリ東の女たちは、なぜ歩いているの、馬は……」
「身一つで放り出されたのでしょう、多分、略奪されてきた女たちでしょう……買い取る身内もいない……残ればみじめな奴隷生活が続く……」
?
「戦いで、美しい女を奪ってくるのです……価値がなくなると……捨てる……この機会に賭けたのでしょう……」
「ご主人様は、明らかに女神さまの化身……どうせ歳をとれば捨てられ……どこかで死ぬことになる」
「なら、女神さまのお手で殺されるのなら、まだその方がまし……」
「しかし……奪った女でも、それなりの待遇ではないのですか……」
そうでした……戦争捕虜ですよね……身代金を支払われなければ、奴隷でしたね……
「ではあの方たちは……」
「死ぬために付き従っているのです」
私の条件の説明が悪かったようです……
確かに取りようによっては……飽きたらポイを覚悟せよ。
それでもついて来たのですね……
私のこめかみに、十字のマークが浮かび上がったような……
「あの方たち以外に、そのような女は残っているのですかね?」
「いないとは思いますが、動けない者が幾人かは……」
私は歩いて付き従ってくる、女たちの元へ行きました。
「お仲間で残っている者はいるのですか?」
「動けない者とか、女神さまの御前に出られない者とか、数十名が残っています……」
……
「希望する者は全員です、私は言葉をたがえません!」
私は一行をそのまま進むように指示しておき、再びテングリ東のクリエンに戻りました。
他の地域から、テングリ東の兵が集結し始めています。
その中を私は歩いています。
ナノマシンはまだ活性化していませんが、私の手には愛用の電撃杖があります。
「奴隷女を幾人か忘れていた、もらっていくぞ!」
「……」
「テングリ東の者どもよ、生き残りたかったら、ここに奴隷女を全員集めろ」
「王を殺した女、よくものこのこと来たものだ」
「私はいま機嫌が悪い、かかって来るなら、さっさとこい!」
ガラが悪い……極悪の私です。
とびかかってきた男は、私の電撃杖で心臓を貫かれています。
「いくらでもかかってきなさい!私への血の供物として受け取ってあげます」
「次はだれか!私に戦士の血を捧げるのは!」
血を要求すると、アステカの神になった気分ですが……事実そのとおりなのでしょう。
この社会体制に、怒りを抑えきれないのです……
「マスター!精神エネルギーが増大しています!不測の事態が起こりかねません!」
……不便……な私……
「これ以上、私を怒らせないでくれませんか……滅亡したくないでしょう……」
声のトーンを抑えて言いますと、異常な沈黙が支配しました。
「戦の女神よ……では、我らテングリ東族をどう扱われるのか?」
明らかに、この場の指導者らしき男が、進みでて云います。
「私は嘘はつけない、したがって真実を語るしかないが、私は汝らの王を殺しに来たのだ……」
「かの者は私の分身ともいえる存在だった……かの者が誕生したのは、私の不手際といってよい……」
「したがって、弟とも呼べる汝らの王を、始末するしかなかった……」
「テングリ東の民に含みはない」
「ただ私も女である、女がこのように虐げられているのを見ると、怒りが湧いてくる」
「しかし、これは汝らの社会風習とは理解している、したがって何とか怒りを抑えたい」
「だからこの場は、私の要望を受け入れよ」
「この場にいた、いわゆる『奴隷女』は、私と縁があるのだろうから」
「奴隷女は献上させていただく、ただ一つ、我らにも願いがある……」
「云ってみよ、可能ならば、一つぐらいは聞き届けてもよい」
「この地の部族は、長く戦っていた」
「我らテングリ東族は、この地の部族を統一して、南の趙に対抗しようとしていた」
「しかしいま我らは力をなくし、再び争うこととなる……」
「できますれば、この地の各部族を、争わないようにしていただきたい……我らも正直疲れた」
……どうしましょう……なんとか簡単に、この願いを聞き届ける方法があるかしら……
私はここで思い出したのです……
惑星エラムの、今は無きフィン連合王国の社会体制を……
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
身代わり悪役令嬢は、フラグを圧し折れない。~だって、本職「侍女」ですからっ!!
若松だんご
ファンタジー
「ねえ、リュリ。アナタ、協力してくれるわよね」
ローゼリィお嬢さまの一言で始まった、とんでもないお願い。
お嬢さまは、あたしたちのいるこの世界とは別の所、異世界からの転生者で、今いるこの世界は、「ゲーム」のなかなのだと言う。そしてお嬢さまは、「悪役令嬢」。主役の女の子をイジメて、婚約破棄、断罪、下手すりゃ処刑という、最悪な未来の待つお立場なのだ。
――げぇむ?
――てんせい?
――あくやくれいじょう?
なんのことやらサッパリわかりませんが、とにかく、あたし、リュリはお嬢さまのためにガンバリマスッ!! 最悪な未来を回避するために、なんだってお手伝いいたしますともっ!!
……って、え!?ええっ!?
お手伝いって、まさか、お嬢さまの身代わりに学園に通うことなんですかっ!?
いや、それは、ちょっとさすがに。
しかも、そこにはお嬢さまを破滅させる未来を引き寄せてしまう、「攻略対象者」の皆さまもいらっしゃるのっ!? それも七人っ!!
うえええっ!! あたし、バレずにお嬢さまのフリ、出来るんでしょうかっ!!
ええいっ、こうなったら、女は度胸よ、根性よ。やってやろうじゃない……の、って。やっぱり無理です、お嬢さまぁ!!
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
あの日あこがれた瞬間移動
暁雷武
ファンタジー
五歳のころ主人公はある現象に心を打たれた。それは瞬間移動である。一瞬にして違う場所に移動する。これほどまでに魅力的なことはない、と。主人公はそれから瞬間移動を実行するため人生のすべてをかけて転移実験を繰り返した。そんなある日、主人公は交通事故にあい死んでしまう。次に目を覚ますとそこは魔術を使うことができる異世界だった。前世の学力をもとに主人公、キリアス・ルドルーファの冒険が始まる。
レオンライト叙事詩 〜異世界ガチで冒険した結果〜
加納ウノ
ファンタジー
ーーー龍の時代が終わりを迎え、数多の種族がその生命を謳歌していた頃。
世界から一つの命が消えた。
そして世界に一つの魂が訪れた。ーーー
火事で死んでしまった男は魂だけで異世界へ。
彼は、前世の様な不甲斐ない人生を繰り返さないために、新たなる世界を謳歌せんと邁進する。
そして、さまざまな冒険の末、彼は偉業を成し得た。
ーーこれは、そんな彼の人生を記した英雄譚であるーー
異世界王道ヒーロー冒険ファンタジー!
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
あらゆる属性の精霊と契約できない無能だからと追放された精霊術師、実は最高の無の精霊と契約できたので無双します
名無し
ファンタジー
レオンは自分が精霊術師であるにもかかわらず、どんな精霊とも仮契約すらできないことに負い目を感じていた。その代わりとして、所属しているS級パーティーに対して奴隷のように尽くしてきたが、ある日リーダーから無能は雑用係でも必要ないと追放を言い渡されてしまう。
彼は仕事を探すべく訪れたギルドで、冒険者同士の喧嘩を仲裁しようとして暴行されるも、全然痛みがなかったことに違和感を覚える。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる