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第二十二章 人殺しの旅

神は私に何を望む

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 ……あれ……なにか大事なことを忘れているような……とても大事な……

 忙しくて忘れていた事なのですが……ナノマシン……そうナノマシンの停止です。

 ブリタニカにいた時、私は想いで、物質を作り出しました……
 それはあの時のブリタニカが、幽子の世界だったからでした……

 それを確かめようと思っていたのです。
 でも……ブリタニカのハレム騒動で、コロッと忘れていました。

 いまこそ確かめてみましょう。
 ナノマシンは不活性化していますし……

 私は望んでみました……お風呂を……
 この場所の、地下のどこかにある、深層熱水の吹き出す割れ目を作ります。

 そして目の前に窪地を作り、そこの表層土壌を玉砂利に変え、底に敷き詰め、側面を切石に変えました。

 いままでと変わらない?
 違いますね……物質を変換できたのですから……
 手ごたえを感じました。

 さらに今一つ……変換元など使わずに、物が作れるのか……
 洗面器と石鹸とシャンプーを出してみましょう……

 ポチャン……
 お湯の上に、プカプカと浮かんでいます……

 物質変換とは意味が違います……
 似て非なるもの……こんな力をどうするの……
 ブリタニカの出来事の意味は、この力だったと確信しました。

 神の贈り物?とんでもない……
 これは神の試練ではありませんか……
 普通こんな力があれば、人は狂ってしまいますよ……
 おかしくならないほうが、おかしい……

 私の百年の経験が、この力に対して耐性をもたらしているようです。
 百年という時を、私に課しての此の力……

 ただ気がついた事があります。
 魂は作りだせないらしいのです。

 天之御中主(あめのみなかぬし)様は、私に何を望むの……
 
 でも、切り替えの早いのが、私の取り柄なのでね……
「お風呂入りましょう♪恐狼(こんらん)、のぞきなんかするものがいれば構いません、ご飯にしてしまいなさい!」
 
 天幕をイメージしてみました……
 ナノマシンが不活性化していても、同じようなことができます……

 星空の下、大草原の真っただ中で、温泉に浸かれるなんて、いいですね。

 マレーネさんに通信できるかしら……
 思念の力で呼びかけて見ますと……
「マスターですか?これは……思念波……テレパシーですね……」
「しかし、マスターは閉鎖空間の中におられるはず……」

「惑星中原の、北部の大草原の真っただ中で、温泉に浸かりながら、念じているのです」
「マスター……不可能な事なのですが……」

「それが出来るのですよ、それにナノマシンがなくても、同じようなことができますし」

「……」

「あら、ごめんなさいね、無粋な者が、私の裸をのぞきに来ましたのでね」
 恐狼(こんらん)がうなり声をあげています。

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