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第六十章 根源の存在

大神は御座(おわ)します

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「これは……出雲大社の御客座……」

 ……出雲大社本殿内にある御客座、小さな社、別天津神(ことあまつかみ)五柱をお祭りしているといわれています……

 ヴィーナスさんにははっきりと、御客座が鮮やかな光に包まれたのが見えたのです。

 その時、なにか訳もなく確信した言葉が口からでました。
「神のさらなる神、大神は御座(おわ)す」
 自分でも驚いたヴィーナスさんでしたが、
「御心にかなったというのですか……ありがたし……」

 そういうと二拝して、一切成就祓(いっさいじょうじゅのはらい)の祝詞を唱えたのです。

 極(きわ)めて汚(きたなき)も滞無(たまりなけ)れば穢(きたなき)とはあらじ
 内外(うちと)の玉垣清淨(たまがききよくきよし)と申(もう)す

 そして天井に向かって、二拝四拍手一拝しました。

 この後、この行動に対して、ヴィーナスさんは一切の説明をしませんでした。
 ただ、サバサバとした顔になったようです。

「さて掃除をして、舞踏会でも致しましょう、今日は目出度い日となりました」
「私は皆さまと踊りたいのです、男装でしたよね、いいでしょう」

「私と踊りたい方は、白のイブニングドレスに白のオペラ・グローブに身を包んでやってきなさい」

 このヴィーナスさんの一言で、神殿都市シビルは大騒動になりました。

 一時間後に急遽、舞踏会を行う。
 ついてはウイッチで希望する者は、踊りの相手をしてもらえる。
 この話を、奉仕の魔女団がエラムの各ハレムに伝えます。

 その間にヴィーナスさんは、お掃除などしていました。

 そしてエラムにいる全てのウイッチが、異空間倉庫を通ってやってきました、皆さんウキウキとしています。
 ディアデムと呼ばれる小さい冠を、ヴィーナスさんは用意したようです。

 入りきらないので三交代となり、第一の組みが入って行くと、ヴィーナスさんが一人で待っていました。

 扉が閉められ、ヴィーナスさんが仮想制御戦闘能力で人数分に分身します。
 そして一人一人に歩み寄り、
「お嬢様、よろしければ踊っていただけませんか?」
 といいます。

 ウイッチさん、うっとりとしていますと、ヴィーナスさん、手を取りました。

 そして何処からともなく、『美しき青きドナウ』が流れ始めたのです。

 三回目が終り、ウイッチさんたちが帰って行きます。
 そしてヴィーナスさんは一人に戻り、今度は麗人さんたち一人一人と踊り始めました。
 この時、大広間のドアは開けられ、ヴィーナスさんと麗人さんたちとの踊りが、公開されたのです。

 何度も何度も、『美しき青きドナウ』を繰り返して踊っているヴィーナスさん、生き生きとしています。
 本当にスッキリとしたのでしょうね。

 世界は楽しく美しく過ごすものである。
 この時、ヴィーナスさんは世界の行く末が、安堵する日々であるとはっきりと認識したのです。

 デーヴァやアスラ、この一連の流れを包括するカタカムナと呼ぶべき時の流れ、いまヴィーナスさんが時の輪を正した行為も、カタカムナの一つの歴史、造化の神々もその流れの中にいる……

 それらを全て飲み込む一つの存在が、明日は明るくなると、ささやいたのを知覚したのです。

 ……大神は私たちを見守っておられる……約束された明日へ努力すればいい……素晴らしき日々かな……

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