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第五十五章 劣勢
エラムの愛人 其の一
しおりを挟むニライカナイに警報が鳴り響いた。
オルメカの後方支援艦隊司令官西光子は、戦時最高幕僚部に詰めていた。
「何事か!」
「虫の大艦隊が転移してきました、物質化しています!」
「エンブレスに報告!ショチルの臨時防衛艦隊を出動させよ!」
ニライカナイ回廊に休眠状態で連結されている標準型ステーション56隻、224隻の警備ステーションを指揮下に入れ、ショチルの戦隊は臨時の防衛艦隊に再編成されています。
しかもニライカナイにある『インフェニティ・カーゴ』、『ミニ・インフェニティ・カーゴ』、『マイクロ・インフェニティ・カーゴ』は、全力稼働して膨大な艦艇をはきだしています。
ショチルは、ニライカナイに押し寄せる、膨大な虫の艦隊と戦闘を始めます。
すさまじい消耗戦となっています。
……いまだ、テュールを投入する時だ!……
ニライカナイの戦闘領域の反対に、異様な空間が現れます。
ヴィーナスさんは戦慄しました。
現れた空間は斥力の塊なのです。
……あれに触れれば、ビッグリップじゃないの!何とかしなくては……
ヴィーナスさん、とんでもない方法を取ります。
ニライカナイは、銀河のボイドの縁に浮かんでいますが、目の前に幾つもの銀河団があります。
数え切れない銀河が所属し、その中にある超巨大質量のブラックホールを瞬時に集め、それを増幅、さらに圧縮しぶつけたのです。
その直前に、そのあたりを遮断します。
簡単そうにしていますが、ヴィーナスさんといえど、とてつもないエネルギーを消耗したようです。
真っ青な顔になっています。
「ルシファー様!」
西光子が悲鳴に近い声です。
「大丈夫……こんな事ぐらいで倒れはしません!」
「それよりヴィクトリアさんとアテネさんと、それに小雪さんとアリスさんを呼んでください」
四人がやってきました。
「手短に話します、とにかく私とともに死ぬ覚悟をして下さい、多分、敵は死神みたいな物で、このニライカナイ内部に攻め入ってくると考えられます」
「ヴィクトリアさんと小雪さんは死神を扱えます、アテネさんとアリスさんも、三鈷杵も配布していますので扱えるはずです、皆さんの力を貸して下さい」
ヴィクトリアさんが、
「あるじ殿が初めて『死ね』と命じてくれた、私は嬉しい、エラムで出会ってから百年ほど、やっと出番が来た」
「ありがとう、先ほど私は膨大な力を行使しました」
「敵の思い通りになってしまいました」
「皆様の手助けが無ければ、私は敗北するでしょう」
「しかし、この築き上げた世界、平和、人々の日々の生活を守るために、私は敗北できないのです」
「死神を扱えるのは、私と姉を除けば貴女たちだけ、戦いも最後の局面になってきていると思います」
「敵も首魁は一人、そして私が一人になるのを待っている」
「決闘でけりをつける覚悟でしょう、そのために私の力をそぎ落とし、決闘での勝利を、万全のものにしようとしているのです」
「スペース・コロニー2に、微小な異物が転移!増殖しています」
「すぐにスペース・コロニー2を閉鎖せよ!」
ヴィーナスさん、すぐに住人を全員をスペース・コロニー1に転移させます。
このぐらいは、何てこともないのでしょう。
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