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第五十四章 デーヴァの『しもべ』

黒い霧のムスペル

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 ルシファーよ、汝が最後のアスラのヴァルナなら、このブラフマーは最後のデーヴァのインペラトル。
 汝は我より強者であってはならぬ。
 アスラがデーヴァより強者であってはならぬ。

 『天之御中主(あめのみなかぬし)』神は、『クロノス』神より強者であってはならぬ。
 必ず勝つために全てを検証する、それが帝王、このブラフマーなのだ。

「セイレンステーションと、ヴァルホルステーションに膨大な虫の艦隊が転移してきました!」
「質量を持っています!」
「現在二つのステーションは、近傍の貨物鉄道ステーションを戦闘序列に組み込み戦闘中です」
 
「プラネテスの、惑星ジャーリアのカラミティ航空宇宙軍を動員して、ヴァルホルステーションを防衛させよ!」
「セイレンステーションの敵艦隊は、深雪のニライカナイの防衛艦隊を派遣せよ!」
「必要なら訓練中のテラ号も動員せよ!」

 イシスさん、アーチダッチェスとして命令しました。
 軍事要塞である、プラネテス級二番艦テラ号は、まだ実戦配備が出来ない状態なのですが、深雪の戦闘序列に入りました。
 
「ニライカナイの防衛が手薄になりますが?」
 幕僚の一人が聞きますと、
「回廊に休眠状態で連結されている、標準型ステーション56隻を分離、ドールタイプに収納している、224隻の警備ステーションも全数稼働、残っているショチルの戦隊に配属しなさい!」

 ……上手くいった、虫の艦隊もまだすこし残っている、上手くいった……『ムスペル』よ、出番がやってきたぞ、力を発揮せよ!

「大変です!セイレンステーションとヴァルホルステーションの機能が低下しています、ステーション内部で反乱です!」
「反乱!」

 戦時最高幕僚部は大騒動になります。
「詳細な報告をしなさい!」
 イシスさんが怒鳴っています。

 セイレンステーションとヴァルホルステーション内に黒い霧が発生、その霧にふれた住人が恐慌状態に陥り、暴動を起こしているとの事です。
 幸い自動防衛戦闘は出来るようです。

「死神みたいな、幽子結合体が侵入したのであろう」
「セイレンステーションには、私が対処しに行ってくる!」

「天照大神(あまてらす)!ガブリエルと四精霊を率いて、ヴァルホルステーションに侵入した、敵を何とかしていてくれ」
「セイレンステーションの敵を片付けたら、すぐにヴァルホルステーションに行く!」

 イシスはすぐに、ニライカナイ内の泊地に待機していた、オルメカの後方支援艦隊司令官西光子を呼び出し、留守になる戦時最高幕僚部を任せた。

 一方、天照大神(あまてらす)も、すぐにガブリエルと四精霊を率いて、ヴァルホルステーションに。
 ステーション内は大変なことになっていた。

 ヴァルホルステーションの戦闘コンピューターは住民に破壊され、その住民は気絶するか、発狂するかしていた。

「これは……ルシファー様が出される死神と同じような状態だが……」
 すぐにそれが正しい事であったと、分かることになる。

 黒い霧が漂いながらやってきたのだ。
「三鈷杵を起動せよ、あれは幽子の集合体、我等の精神に攻撃を仕掛けてくるぞ!」

 瞬時に三鈷杵は起動します。
 そして六体の死神が浮かび上がったのです。

 死神は霧のように広がり、互いの霧は混ざり合います。
 黒い霧の方がところどころに輝いているので、違いが分かります。

 四精霊と呼ばれる、ウンディーネ、ノーミーデス、サラマンダー、シルフィードは、あっという間に黒い霧に包まれ動かなくなり、天照大神(あまてらす)とガブリエルにも黒い霧が迫ってきたのです。

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