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第五十四章 デーヴァの『しもべ』

量子テレポートは三鈷杵の形に

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「ねぇ、いいアイデアがあるわ♪」
 ヴィーナスさんが、嬉しそうにしながらやってきました。

「アナーヒター!休養するのではないのですか!」
「その……目がさえて、そしたらアイデアが浮かんできて……」
 ヴィーナスさんの言いわけに、ため息をついたイシスさんです。
 
「で、どのようなアイデアですか?」
 と、マレーネさんが聞くものですから、ヴィーナスさん、しゃべりましたね。

「量子テレポートですか……」
「ブラフマーは必ず、次を仕掛けてきます」
「彼はまだ奥の手を隠しているはずです」
「北欧神話の『黒い巨人』が、出てくるのではありませんか?」

「私は虫を使って、大規模な不正規戦を仕掛けてくると思っていました」
「事実、加盟惑星に対して、大規模攻勢をかけてきています」

「ユニバースは対応に手いっぱい、このまま消耗戦を仕掛けてくるつもりだったでしょう」
「しかし私たちはそれに対処しようと、三種のインフェニティ・カーゴを量産し、仕掛けられた消耗戦を五分五分に持ち込んだ」

「これは彼としても不本意な状況、しかしチャンスでもある、こちらの戦力は枯渇してきている、もしかするとブラフマーの思惑通りではないか?」

「いまここで加盟惑星の世界、都市部などにゲリラ戦を仕掛けられたら対処が難しい」
「ヴィーナス・ネットワークが足元から揺さぶられる、何とかしなくてはと考えた結果が、量子テレポートなのです」

「しかし、こちら側にいながら幽子体を操作できるのですか?」
「量子テレポートとは、つまりは情報の伝達、マスターの案では幽子体に情報を伝達し、物質世界から直接、具現化前の幽子世界に、攻撃を仕掛ける……なんて事が出来るのですか?」

「思念波を利用するのです、思念波は一種の幽子、この思念波幽子と幽子体を構成する幽子を、量子もつれ状態に置けば出来るはずです」
「良く考えれば、私が出す『死神』はこれに近いもの、それの大規模なものですから、精神がタフな生体なら、操作できるはず」

「……可能と計算できますが……強靭な精神の持ち主でなければ……」
「でも、これなら有機体アンドロイド出身の方でも可能、たしかに誰かれともいきませんが、チョーカー所持者で独鈷杵(ドクコショ)を持てるような方は、対象になります」

「ヴァルキュリアなども、アテネやビクトリアのように戦えるはず、ウイッチの名簿を精査して、該当者をリストアップしませんか」

 結局、三鈷杵の形をとり、同じようになりチョーカーにぶら下げて使う事になりますが、さすがにこれは量産が難しく、しかもヴィーナスさんしか制作出来ないようです。

 とにかく、プラネテスの動員可能の寵妃さんたちの分を、何とか作り上げたヴィーナスさんでした。

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