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第五十三章 ヨルムンガンドの大波

泥沼のウェヌス宇宙

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 のちにラグナロクと呼ばれたこの戦争、その第一波はほぼ同時に三千世界全域を覆った。

 ヨルムンガンドが起こす大波のように、世界をのみ込もうと虫はよみがえった。
 神に与えられた食糧、生者を喰らわんと……

 ヨミ・ミリタリーは奮戦しているが、ところどころで劣勢になりつつある。
 序列上位の四軍団は、何とか虫の出現を抑え込みつつある。
 おもにニューフロンティア宇宙と、幾つもの宇宙を担当しているバアル・ゼブル
 デーヴァ宇宙を担当するアグレアス
 バアル・ゼブルの代わりに蓬莱宇宙を担当するヴァッサゴ
 ウェヌス宇宙を預かるサミジナ

 しかしオルメカと違い、ヨミは加盟惑星世界が存在しない、監視対象の宇宙を幾つも抱えている。
 いまここに序列56番、吟遊公爵グレモリイは危機に直面していた。

 ヨミ一番の美女と呼ばれるグレモリイは26の軍団を率いて二つの宇宙を監視していた。

 ミニ・インフェニティ・カーゴの配属を受け、それで創り出した宇宙海防戦艦スキーズブラズニル改級6隻で正八面体を構成、中央にミニ・インフェニティ・カーゴを配した、『公爵夫人の宝冠』号が艦隊旗艦である。

 次から次に湧きでる虫の星系。
 『ヨルムンガンドの大波』に対処するため、グレモリイの26の軍団も戦闘に入った。

 ここでも膨大に出現する、虫の星系に取りこぼしが出て、虫の艦隊が増殖を始めたのです。

 そして虫の戦法である突撃艦が『公爵夫人の宝冠』号に突っ込んだのです。
 艦隊旗艦『公爵夫人の宝冠』号は、ついに被弾しました。

「まずい、これでは戦闘が続けられない!」

 スキーズブラズニル改級が二隻大破、その上にミニ・インフェニティ・カーゴが破壊されたのです。

 緊急電を受けた戦時最高幕僚部では、すぐに待機していたヨミの序列72番、正義の伯爵アンドロマリの軍団の増派を決定、グレモリイのところへワープさせます。

 このようなことが次々と起こり、待機していた軍団も次々と駆り出されていきます。

 とうとう最後の予備軍として残っていた序列58番、空席となっていた炎の総統アミィの軍団も、五号機械=磐座(いわくら)フミに率いられて出て行きました。

 そんな中、さらに悲報が届きます。
 ウェヌス宇宙を預かる、死霊の公爵サミジナの軍団が、艦隊のど真ん中に現れた虫の星系の為に、サミジナの旗艦『ネクロマンシー』号が大破、インフェニティ・カーゴは致命傷を負ってしまいます。

 残りの艦艇で、虫との戦いを続行していますが、戦力の補給が満足に出来ず、唯一残っていたミニ・インフェニティ・カーゴを、過負荷状態にして艦隊の崩壊を防いでいるのが現状です。

 ヨミの最高司令官でもあるイザナミは、ついに自らが出動する決定を下し、アーチダッチェスもそれを認めたのです。

 ニライカナイ要塞から、ヨミ号が連結をとき、ウェヌス宇宙へ。
 先ごろヨミ号、オルメカ号、ユニバース号は臨時大改装を受けています。
 内部にインフェニティ・カーゴとミニ・インフェニティ・カーゴを、各二セット増設されたのです。

 さらに出港直前に、戦訓でネオニコチノイド転移爆弾も量産可能になっています。
 そしてアウグスタ婦人兵団が乗り込んだのです。

 ウェヌス宇宙の戦いは虫が優勢です。
 他の場所より、虫の星系の出現率が高いのです。

 イザナミさんはバアル・ゼブルの戦法を採用、二つのインフェニティ・カーゴはメギドの火を量産、二つのミニ・インフェニティ・カーゴはネオニコチノイド転移爆弾を量産、ものすごい勢いで、ウェヌス宇宙の虫退治を始めます。

 そしてヨミ号内に転移してきた虫は、瞬間にネオニコチノイド殺虫剤を吹きかけられ死骸は、分解廃棄されています。
 しかし凍結時空間の戦いは、繰り広げられたのです。

 ヨミ号内で待機していたアウグスタ婦人兵団、その司令官として、『ウェヌスの侍女 寝室係兼警護長、福者、側女待遇格子』ウォルムニアは命令を下しました。

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