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第五十一章 戦娘(いくさむすめ)

出征嘆願書 其の一

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 この頃には、ギャラリーが集まっています。

「皆さん、私はこの世で一番の変態女です、そして皆さんは、その女の妻であり、女奴隷でもあります」

「私はこの世で一番の嫉妬深い女です、そして皆さんはその女の嫉妬の対象です」

「私はこの世で一番の愛情の収集家です、そして皆さんはその女の大切な収集品です」

「私はこの世で一番の果報者です、それは皆さんが側にいてくださるからです」

「皆さんとともに、私は存在するつもりです、いついつまでもです」
「そして身勝手ですが、いついつまでも、皆さんのベッドに寝させていただきます、いいですね」

「だから信じてくださいね、私は負けはしません、この幸せを邪魔する者は、神であろうと悪魔であろうと、排除して見せます、いつの世でも執着は一番の力です」

 ヒルダさんが、「私も……」
「露払いをお願いします、その昔の剣は健在でしょう?」
 
「さて、今回は皆さんの力を貸して下さいね」
「皆さんといて思ったのです、私には悲嘆のエネルギーは似合わない」
「歓喜こそが私のエネルギー、そして皆さんが私の力の原動力、私はそれゆえ戦えるのです」

 愛人も戦う!
 この話は、瞬く間にウイッチの間に知れ渡りました。

 そして厄介な陳情が、ハウスキーパー事務局に届きだしたのです。
 出征嘆願書というやつです。
 
 かなりの志願者がいます。
 中には血書をしたためた方もいるようです。

 ハウスキーパー事務局では困り果てて、サリーさんが問題解決に乗り出す騒ぎなのです。

「皆さんのお気持ちは、お嬢様にお伝えしておきます」
「しかし、皆様はお嬢様にお仕えするのが本分、事務であろうが軍務であろうが、お仕事に変わりはありません」
「どうかこの危機に臨んで、目の前の仕事に専念してください」
 
 ハウスキーパーにこのようにいわれ、大体は引き下がってくれたのですが、幾人か寵妃さんが粘っています。

 ギルベルトさんは、
「俺は剣技には自信がある、百年以上生きてきた」
「ここでイシュタル様の為になら死んでもよい、本望だ!」

 サリーさんが、
「ギルベルトさん、なにも貴女が死ぬ必要はありません!もっとお道具を磨いていなさい!」
 こんなことで引き下がる方ではないですね……

 クララ、コルネリア、シャルロッテ、フレデリカの四人組も出してきました。
「剣技ならハイドリアの女です」
 
 アンネリーゼ、ジャンヌのヴィーンゴールヴのモンスター地区の二人の執政は、
「ヴァラヴォルフ族として最後を飾りたい!」

 惑星蓬莱の中川梅子さんは、
「薙刀で御恩を返します!」

「サリー様、私はイシュタル様に愛していただき、寵妃となっていますが本質は女奴隷、身も心もイシュタル様のものなのです」
「いまここで、イシュタル様のために身を捨てるのが、女奴隷としての本分です」

「今回は私でもイシュタル様のために戦えるのです、どうか働き場所を与えてください」
 ギルベルトさんの懇願に、サリーさんも黙ってしまいました。

 同じようなことをコルネリアさんもいいます、とにかく絶対にあきらめそうにありません。

 見かねた次席のダニエラさんが、
「ヴィーナス様のご裁定を仰ぎましょう」

 で、私が呼ばれたわけです。

 困りきったサリーさん、私を見てホットした顔をしました。

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