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第五十一章 戦娘(いくさむすめ)

対ゴキブリ戦用武器

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 ニライカナイの会議から帰ってきたクレア准将ですが、すぐに部隊の幹部を緊急に集めました。

「諸君、大戦争だ、我々も第一線で戦うことになった、しかも白兵戦となる」
「戦略戦術は関係ない、先のアウグスタ戦争どころではない」

「相手は人ではない、化け物といってよいだろう」
「その相手との白兵戦、怖いものはこの後、申し出るように」

 そして、
「アリアンロッド様のご裁可を得ているので、高級幹部にしか開示されていなかった極秘情報とともに、敵の詳細、作戦を伝える」

 クレア准将は自分のオルゴールを取り出し、その立体ホログラム機能を使って、敵を映し出しました。

「敵とはこいつだ、これは古代に生息した、巨大なゴキブリの進化した生物、高度な知能をもち、肉食である」
「しかもあろうことか、人類の女子供を好んで食べるそうだ」

「我らはこいつと、凍結時空間という特別な場所で戦う」
「この場所は火器はもとより、金属関係はすべて持ち込めない場所らしい、今着ている軍服も、持ち込めないだろうとの事だ」

「准将、それではナイフもだめ、ということになりますが」
「そのとおり、それではこんな化け物とは戦えない」
「そこでアリアンロッド様の姉上でもあられる、イシス様という方が、特別な武器を開発された」

「そのためには、今までの軍事加算徽章はペンダント形式となり、これを肌身離さず身に着けることになる」
「このペンダントをしていると、ある程度の魔法が使えるようになる」

「これは一般兵士に対しても、ペンダントをしている限り使用できる、いまより威力をお見せする」

 練兵場に皆を連れ出すと、木銃を持ってこさせた。
 そして片隅にあった、かなり大きな岩の前に立ち、
「皆、良く見ておくように!」
 と、いった。

 クレアさんが木銃を手に取って、「オン」と叫ぶと、即座に木銃が変化した。
 その先には槍の穂先のようになり、全体が金属光沢を放っています。
 どう見ても木製とは思えません。

 クレアさん、木銃を構え、掛け声をかけて、大岩に刺突をかけた。
 166センチの木銃が、ゼリーを突き刺すように突き抜ける。
 引き抜き、銃床で殴りつけると岩が砕けました。

 唖然としている皆に向かって、
「先ほどの特殊な場所では、今少し威力が落ちるかもしれないが、概ねこの通りだ、これならゴキブリも始末出来る」

 婦人戦闘団では銃剣道は必須、体格の劣る女性が戦う以上、白人相手に戦う技術を工夫した、日本帝国陸軍の銃剣道を採用しているのです。
 そのため銃剣道は、突きを重視しています。

 ちなみに短剣術、両手軍刀術、片手軍刀術も戦技として採用されているようです。

 この後、再び会議室に戻りクレアさんが、
「武器は理解出来たであろう、アリアンロッド様のご加護は防御においても発揮される、しかしこれについては後で説明する」

「さてもう一つの問題、衣服の事であるが、まずは裸で戦う覚悟がいる」
「この服を見てほしい、戦う事を第一義としている以上、動きやすさが優先されている」

「勿論特殊な繊維で編まれており、この薄さであるが、たとえ至近距離から銃で撃たれても破れはしない」

「素肌にぴったりと張り付く服なので、衝撃をどう吸収するか懸念があると思うだろうが、ここで、先ほどのご加護の魔法が威力を発揮する」
「瞬時に衝撃を打ち消すことができるそうだ、まぁ少しは痛いのは仕方ないそうだ」

 皆、試作品の服を見て、恥ずかしそうにしています。
「明後日に、我々は留守部隊を残して出征する」

「当面、ニライカナイの第三十五ステーションに駐留し、訓練することになる」
「色々考えることもあるだろうから、留守部隊を希望する者は強制はしない」

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