上 下
22 / 92
第五十一章 戦娘(いくさむすめ)

敵は虫?

しおりを挟む

「ミコ様は、多分相手は人類ではないとお考えです」
「デーヴァは、我々が凍結時空間の中で戦うと、判断しているはず」
「そして、我々の主力は人類にならざる得ない」
「ここは肉弾戦となるしかない」

「ならば個体戦闘力で優位にたち、なおかつ知性を持ち、我々ミリタリーと宇宙戦争が出来る科学力をもつ種族となると、『虫』しかいないとの結論です」

「虫?」

「我々が知っている『虫』のデーターです、画面をご覧ください」

 立体ホログラムが、『虫』を映し出しました。

「ホモサピエンス種族の惑星世界では、ほぼ共通にいたであろう、古代の巨大昆虫アプソロブラッティナに、良く似ています」

「体長は約三倍半、180センチはあるでしょう」
「肉食で見てくれはゴキブリですが、シロアリの社会に似ています、ただ極めて凶暴です」
「好物は人類、しかも女のようです」

 さすがに沈黙が流れました。

「当初この作戦に耐えられるのは、ヴァンパイア族からなる、ブラッドメアリー戦闘団だけと目されていました」

「しかし、それではあまりに戦力が足りない、かといって、そのまま皆さんを、無謀な戦いに投入するわけには行かない、我々の人的資源は有限なのですから」

「そこでイシス様とマレーネ様が協議の結果、なんとか戦えるツールを開発されました」
「またミコ様も、皆様の安全のために、凍結時空間の中でも、着用できる服を開発されました」

「なんでも大事な皆様の裸を、『虫』ごときに見せるなんて許されない事と、おっしゃっておられました」
「試作品をお見せします」

 琥珀の軍務加算徽章、竹光の刀や槍、全身タイツです。

「軍務加算徽章はこのたび、このペンダント方式に変更されました」
「ミリタリーには配布されましたが、皆様方にはこれからです」

「デザインはミリタリーも婦人戦闘団もすべて同じです、ただ花の色やベースの色が違います」
「ベースは皆さんは黒ですが、ミリタリーはプラネテスも含めて白となっています」

「一応各ミリタリーの物も、見本として持ってきてありますので、興味のある方はご覧ください」
「ここにいる皆さんの分は、いま支給いたします」

 見事な黒いベースの、琥珀のペンダントが支給されました。
 
 この後、こまごまと試作品の説明がありましたが、全身タイツのデザインに、クレームがつきます。
 戦時の生理的要求に、対応していないとの事です。

 結果的には、下腹部の大事な部分はむき出しとなり、パンツを上からはくことになりました。
 ちなみに頭はフードとなり、手足は手袋と五本指のソックスとなります。

 さらにデザインはもっと官能的にと、注文がつきました。
 
 この後、『よりしろ』効果による武器の説明があり、剣術などが得意の、戦闘団の動員が伝えられました。

 しかし、クレアさんが、
「ノーザンクラウン婦人戦闘師団は、全軍で参加したい」
「我々は常に銃剣も訓練している、白兵戦なら負けはせぬ、まして『よりしろ』効果が使えるなら、ぜひとも参戦したい」

 結局クレアさんの一言で、すべての婦人戦闘団が参戦することになったのです。

しおりを挟む

処理中です...