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第五十章 戦時体制

臨戦予算案

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 翌日、山下藤子さんは、スペースコロニー1にある総務RCTに出向きました。

「久しぶりね藤子さん、わかっているでしょうが、全部は認められないわ、時間が無いから手早くしましょう、できるだけ要望を吟味してみたわ」
 うまいジャブを飛ばしている、六条さんです。

「退避場所の整備指定と、非常用備蓄品の確保、この二つは致し方ないと認めるわ」
「非常用小型核融合炉と小型陸戦ロボットの配備は、必要性は認めるけど、予算がないの」
「でね、非常用小型核融合炉なのだけど、要は今回の戦いを、持ちこたえるだけでいいのよね」

 うなずく山下藤子さん、もはや六条さんのペースです。

「今回の臨戦待機命令で、非常用小型核融合炉は新型に取り替えられたのよ」

「旧型はほとんど手付かずで残っているのよ、これをそちらにまわすわ、設置はユニバースがしてくれると、確約をとったわ」

「例の寵妃しか動かせない設定は、旧型だから解除してくれると、ヴィーナス様がおっしゃっていますので大丈夫、それで我慢してね」

「小型の陸戦ロボットは?」
「ゼロ査定」

「なんとかなりませんか、今回の臨戦待機命令で、加盟惑星政府も不安視しています」
「執政官府にも、何台かあるではありませんか」
「たしかに一個中隊ほど配属されていますが、目に見えるテコ入れが必要かと考えます」

「目に見えるね……CTR1型1号システムなら予備がかなり在庫としてあります」
「女性型の遠隔操作型ロボットですが、見てくれは完全なヒューマノイドに見えます」

「そして結構な数の、『シュプリンガー』を操縦できます」
「CTR1型1号システム1セットを必要数と、『シュプリンガー』を渡せる限り渡しますので、これで我慢してください、これ以上は無理です」

 潮時と思った山下藤子さん、ここで了承しました。

 少し余裕が出た二人、雑談などを始めました。

「時間が無いそうですが、この後も査定があるのですか?」
「大物が乗り込んでくるの、頭が痛いわ」

 ?

「エカテリーナ様とアンリエッタ様、最後はイシス様よ」
「恐ろしいメンバーですね」
「エカテリーナ様とアンリエッタ様は、なんとなく分かるわ、きっとマルスとエラムの戦時体制について、この間ゼロ査定した分の復活折衝よ」

「ただイシス様は分からない、とにかく胃が痛いわ、貴女同席しない?」
 逃げるように、お暇した藤子さんでした。

 それでも六条さん、奮闘したのですが、イシスさんには完敗したようで、アーチダッチェス司令部の備品など、かなり豪華なものの購入をのまされたようです。

 でもおかしいですね、物品購入にしては、巨額なのですけど……

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