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第五十章 戦時体制
耐乏生活演習
しおりを挟む翌日、惑星世界管理局の主要なメンバーは、ミリタリー号内にある、戦時最高幕僚部に呼び出されました。
ニライカナイというのは、基本的には軍事要塞。
直径は3500キロ、月ぐらいはある惑星移民船クラスのユニバース号、ヨミ号、オルメカ号、そして艦隊ドックなどの、軍事施設用のミリタリー号の四隻よりなるエリアは、軍事領域として、ウイッチの軍務加算徽章がなければ入れないのです。
ちなみにニライカナイの中核、フリングホルニ号には愛人しか入れません。
ニラポと呼ばれる、ニライカナイ・トランスポーターは、この軍事領域は走行しません。
軍事領域の電気軌道交通網は、ミリタリー・トランスポーター、通称ミラポと呼ばれています。
ミラポとニラポには、幾つかの乗り換え電停が存在しますが、どちらも乗り入れは可能なのですが、運用としては切り離されているわけです。
今回は珍しく、ニラポが惑星世界管理局の主要なメンバーを乗せて、軍事領域に乗り入れたのです。
ハウスバトラーの山下藤子さん以下、ほとんどの方は、ニライカナイの軍事領域には、滅多に入ったことはありません。
ニラポはショートワープを繰り返し、あっという間にミリタリー号内の『三軍統合幕僚部前』電停につきました。
どうやらヴィーナス・ネットワーク管理RCTも、呼ばれているようです。
「御苦労さまです、早速ですが、臨戦待機命令が出ましたので、戦時体制に協力していただきたい」
戦時最高幕僚部からの現状など、かなりの軍機に近い説明をうけ、軍事優先の体制を取ることを確認。
取りあえずはニライカナイ及び、ヴィーナス・ネットワーク・レイルロードでも、『耐乏生活演習』などというものを、行う事となりました。
三日後、ニライカナイで、五日間の『耐乏生活演習』が行われました。
ニライカナイでは、軍事にエネルギーなどを集中、ミリタリー号の第一層造船ドッグ群、その120キロ大型一号~四号ドックではスペース・コロニーを一隻、60キロ中型五号~八号ドックでは戦艦スーパースキーズブラズニル級一隻を全力生産。
ユニバース号、ヨミ号、オルメカ号にある小型ドッグではロングサーパント改級をそれぞれ一隻、ヴィーナス・ネットワーク・レイルロードのステーション内の造船ドックでも、膨大な補助艦艇を建造。
さらに軍需工場では、陸戦兵器や小型艦艇、膨大な備蓄の生産を、過負荷にした防御バリアを展開しながら、生産したのです。
その結果して、膨大な艦艇、兵器などがミリタリーに引き渡されました。
とくに非常用小型核融合炉は、かなり改良されており、長さ5メートル、高さ2メートル、巾は3メートルほどのコンテナで、長さが半分になっています。
当初のものは寿命が50年でしたが、一旦稼動させると一万年の寿命があります。
なんせ小さい恒星を、閉じ込めたようなものですからね。
ただ稼動させるのには、膨大なエネルギーが必要で、専用のバッテリーが内臓されていますが、一回分の稼動エネルギーしかありません。
これをすべてのステーションの階層に設置、また戦闘艦艇に設置しました。
ニライカナイでは、電力照明が少し暗くなり、ニラポも間引き運転、内部温度も少し寒くなりました。
「少し寒いわね、一枚多く着こんでください」
ハウスキーパー事務局で、サリーさんが指示しています。
「ニライカナイカフェしか開いていないのね、五日ほど質素な食事で我慢ね」
ソフィア・ペロフスカヤさんが、ニンリルさんにこぼしていると、
「私はカフェで十分、ソフィアは贅沢なのですよ」
有機体になったニンリルさんですが、常日頃から質素に生活しているようです。
惑星ジャーリアでは、皆質素に暮らしているおり、当然執政官も質素なのです。
「そうね、私も昔はジャガイモばかり食べていたわね」
「知らないうちに、贅沢になっていたわ」
でもソフィアさん、昔といっても二三年前なのですけどね。
ヴィーナス・ネットワークが、総力を挙げて実施した耐乏生活演習で、戦時体制の正確な姿が判明。
戦時最高幕僚部が詳細に検討した結果、戦力が一割アップと判定したのです。
一般市民の生活も、そんなに耐乏するわけでもなく、いま少し余力があるようです。
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