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第四十九章 エンブレスの勅命

臨戦待機命令

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「イシス様、我等はアスラ族に仕える戦闘アンドロイド、有機体に進化し、種族として認められましたが、本質は変わりありません」
「ご命令を下されば戦う所存です、ルシファー様、どうぞご命令を」

 オルメカ第三方面軍司令官のマクイルさんがいってくれました。

「マクイルさん、敵の力は強大、私は皆様に命を賭けよと命令しなくてはなりません」
「ここにお集まりの方々の背中には、ヴィーナス・ネットワークの膨大な命がかかっています」
「負けるわけにはいかないのです」

「だから犠牲は極力少ないように、準備をしようと思っています」

「私は命を賭けますが、何が何でも勝ち、皆さまと明日を迎えます」
「命を賭けよと命じますが、さらに生き残り、私とともに明日を迎えよとも命じます」

「私はご存知のように色魔です、勝って皆さまを相手に、酒池肉林をするつもりです」
「戦に勝って、皆さまの『わかめ酒』を飲みほし、酔っ払って見せます」

「梵天ブラフマーとクロノス神様に、アスラのスケベ女の色欲を見せつけてあげます!」

「では勝って、オルメカのお道具を堪能していただきましょうか、遠慮しませんよ」
 と、シウテクトリさん。

「そうですね、ヨミのお道具も、山ほど吟味していただきましょうか、推薦者は全てお願いしますよ」
 と、イザナミさん。

「ユニバースは、お道具以外に隠女もご賞味いただきます」
 と、ゼノビアさんが言えば、
「プラネテスのお道具は多いですよ」
 と、天照大神(あまてらす)さんが言います。

「勿論です、デーヴァとの戦いでは死にませんが、その後の腹上死なら、本望です」
 
 頃あいと見たのか、イシスさんが、
「とにかく勝ち残り、お道具の大宴会の為に、臨戦待機命令を出します」
「各ミリタリーは、予備艦や旧式艦などまで動員して哨戒し、いつでも最大戦力で出動できるように、第一線の艦艇は整備に入ってください」

「また戦闘員もいつでも招集できるように、艦艇の側で待機するようにして下さい」
「プラネテス指揮下の各惑星の婦人戦闘団も、臨戦態勢を命じてください」

「各宇宙の担当者は、管轄の高等知生体の居住する惑星には、出来る限りナノマシンでの防衛体制を取るように」

「マレーネさんは、対デーヴァ用の武器、『改良メギドの火』と『時間凍結装置』の製造をお願いします」

「各ミリタリーは、所属する工廠で、かねてからの計画の、戦時量産タイプの、ありとあらゆる武器、艦艇を製造して下さい」
「このミリタリー号のドックは、スペースシップタイプを全力生産します」

「また各惑星の婦人戦闘団にも、昔の『虫』を退治出来るぐらいの武器をあてがうように、まあ全自動の小型陸戦ロボットの配属を考慮して下さい」

「『虫』の名が出ましたが、虫にご懸念でもおありなのですか?」
 ヴァッサゴさんが聞いてきました。

「虫の幽子を利用する可能性があります、私とアナーヒターは、全面攻勢に虫を使うと考えているのです」
「私たちに、憎悪をたぎらせているはずですからね、ただ虫だけとは考えられませんが……」

 ?

 ヴィーナスさんが、
「アスラもデーヴァも、幽子は一度として登場していない、インドラでさえ、本来のデーヴァ神族ではなかった」

「この二つの種族の、幽子の復活はないと考えられるが、その昔、アスラは貴女たちの力を借りて、世界を統治したように、デーヴァにもそのような種族がいるはず」

「ガブリエルさんの例があるように、デーヴァのそのような種族の具現化はありえる」
「そしておぼろげだがその輪郭は見えている、多分、北欧神話に出てくる『黒い巨人』……」

 そう、『天之御中主(あめのみなかぬし)』様は示されている、ラグナロク、この名が何気なく私たちの中に響いている……
 角笛ギャラルホルンが鳴り響けば、ムスペルの一人、スルトが現れる……ひょっとすれば霧の巨人も……
 
「そのようなものが出てくれば、私とイシスが対処いたします、とにかくはまずは虫退治です」

 このエンブレスの一言で、戦時最高幕僚部では、まずは虫退治という方針が共有されたのです。

 会議の後に臨戦待機命令が発令され、ヴィーナス・ネットワークは戦時体制に移行しました。

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