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第六章 キュネブルガの物語 トライアングルの内乱

会合点

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「なんとか会合できそうね……貴女、腕がいいわね、お名前を聞いていなかったわね」
 女性パイロットはクウェンベルガといい、リンデスファーンの出身であった。

「そういえばエアンフレドさんは、これからどうするの?」
 側にいたエアンフレドに、キュネブルガが声をかけた。

「なにも考えてなくて……ただ皇帝のハレムの女奴隷なんて、どうしても嫌でしたので……」

「私たちはペクサエテに戻っても、ノーサンブリアと同じ、どうせ王族は戦争の責任を問われる、女も不名誉なことになる」
「そんなことになるぐらいなら、死んだほうがまし、どうせなら故郷で死にたい、その思いでノーサンブリアを脱出したの」
「貴女はソンガイ帝国の指名手配者、私と一緒にペクサエテに戻っても同じ事になる、もう逃げ場所はないのよ」

「辺境の惑星で、ひっそりと隠れ住むことにしようかと考えています、私も訪れたことはないのですが、リンデスファーン公爵家に伝わる航路図には、正確な位置が示されています、たしか惑星スカラ・ブレイと書かれていました」

 クウェンベルガが操縦する宇宙ヨットは、非常用ソーラーセイルの行動範囲ギリギリの会合点に何とか進出、半日後に、敗残のペクサエテ防衛艦隊と会合できたのです。

 キュネブルガ姫一行は唖然としました。
「四隻しかいない……それも突撃砲艦ばかりだし、どの艦もボロボロじゃないの……」
 残存艦艇はペクサエテ防衛艦隊のうちの第二突撃戦隊といわれるもので、精鋭部隊ですが……

 残存のペクサエテ防衛艦隊ですが、ソンガイ帝国が急遽ペクサエテに分遣隊を派遣したとの報告があり、とりあえず戦力にならない四隻だけになった、第二突撃戦隊を会合点に分派、残りは全速で本星防衛に向かったのです。

「姫、ペクサエテへお送りせよと命令を受けておりますが、情勢ははかばかしくありません」
 第二突撃戦隊の、ただ一人生き残った参謀がこういいました。

 この参謀が最上級士官のようで中佐、司令官代理となっています。
 配下の艦艇の艦長もほとんどは戦死、航海長が指揮している艦もあるそうです。

 そこへ緊急電が入ってきました。

「司令官代理、ペクサエテ政府より通信です。本隊がペクサエテ星系外縁部でソンガイ帝国艦隊と交戦、壊滅したそうです……」
「ペクサエテ政府は無条件降伏……キュネブルガ姫を降伏の証として引き渡すことになった……」
「第二突撃戦隊指揮官はキュネブルガ姫を拘束、ペクサエテまで連行せよ、とのことです」

「平文なのか?」
「はい」

 しばらく考えていた参謀ですが、
 分派されたときに、防衛艦隊司令官より預かっていた封印命令を開くことにしました。
「689か……」

 689とは戦闘前にあらかじめ決められている作戦コードで、001の突撃からはじまり、600番台は機密となっています。
 ちなみに601は自沈です、689というのは最高士官の指揮下に独立行動をせよ、との意味です。

「私の考えで行動せよか…いや、最高士官の命令が優先されるわけだから、この場合、姫のご命令に従えというのだろうな……」

「姫、最後の防衛艦隊司令官の命令により、われわれは姫のご命令に従います」 

「命令といわれても……帰る家がなくなったのですから、どうすればいいのか……こうなったら死ぬのも愚かですし……」

 ここでクウェンベルガさんが、
「口を挟むのをお許しください、どうでしょう、エアンフレド様のおっしゃられていた、惑星スカラ・ブレイに向かわれてはいかがでしょう?」

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