上 下
47 / 67
第六章 キュネブルガの物語 トライアングルの内乱

ノーサンブリア王国公爵令嬢エアンフレド

しおりを挟む

 ノーサンブリア王国公爵令嬢エアンフレド……
 王国一の美姫、リンデスファーン公爵家の末の娘である。
 その美貌はソンガイ帝国にも知られている。

 リンデスファーン公爵家とは、最初のノーサンブリア王でもあるエアンフリッドの直系で、エアンフリッドは兄弟であるオスワルドに暗殺され王位を簒奪され、そのオスワルドの子孫がバーニシア王朝の始祖である。

 以来、細々と惑星ノーサンブリアのリンデスファーン島を領地として、バーニシア王家に迫害されながらも生き残ってきたのである。

 先ごろリンデスファーン島付近の海底で巨大地震が発生、リンデスファーン公爵家の城館は崩れ落ち、その上に巨大な津波が島を襲ったのです。

 被害は甚大、リンデスファーン公夫妻、エアンフレドの姉夫妻、そして弟も亡くなったのです。

 被災からの復興のために、一族はエアンフレドの叔父をリンデスファーン公爵と仰ぎ、王に援助を求めた。
 ノーサンブリア王は、二番目の王子とエアンフレドの婚姻を条件に援助を約束した……
 しかしそのときには戦火は迫ってきた、惑星デイラが陥落したのである。
 
 ノーサンブリア王は全戦力を率いて出征、王子たちも同行……敗戦の中、王も二人の王子も戦死してしまった。

 いま王国は滅亡し、惑星ノーサンブリアは宰相の指導の下、何とかソンガイ帝国と停戦交渉の最中にある。
 実質的な敗戦ではあるが、よりよき条件での講和に心血を注いでいる。

 そしてソンガイ帝国から、停戦交渉を始めるに当たり、王族男子の処刑を要求してきたのである。
 
 王族男子についてはほとんど戦死していたが、残った者も敗戦の責任を背負い、潔く自決した。

 この結果、ソンガイ帝国と惑星ノーサンブリアは停戦交渉を始めた。
 ただここでソンガイ帝国側から、暗に皇帝のハレムに女奴隷を献上すべきではと……条件が緩和されるかも……
 そしてその女奴隷は名指しされた。

 ノーサンブリア王国公爵令嬢エアンフレド

 宰相は、エアンフレドについては惑星ノーサンブリアは混乱の最中、エアンフレドの居所は不明、生きていれば差し出すが、治安機関も壊滅している状況では、拘束も不可、と回答した。

 その結果、当面は惑星ノーサンブリアはソンガイ帝国の軍政となるので、ソンガイ帝国で拘束する、となった。

 停戦は成立、ソンガイ帝国の進駐は明後日と発表され、ノーサンブリア王国公爵令嬢エアンフレドは、指名手配となった。

 それがキュネブルガ姫が、脱出を決意した日であった。

 キュネブルガが条件を呑み、どさくさで何とか雇った女性パイロットがヨットを動かして、ノーサンブリア宇宙港を出港したのはその日の夜半、ソンガイ帝国軍はノーサンブリア星系の外縁部に待機していた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件

フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。 寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。 プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い? そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない! スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

処理中です...