姫神の女たち２ ユーノー・ソスピタ（維持する者）のニンフ 【ノーマル版】

第六章 キュネブルガの物語 トライアングルの内乱

ＮＧＣ６０４観測ステーション再び

　ペクサエテの姫、キュネブルガは、惑星ノーサンブリアから脱出しようとしていた……

　行きがけの駄賃で、ノーサンブリア王国公爵令嬢エアンフレドと、パイロットのクウェンベルガも同行することになり、ぼろぼろの王室宇宙ヨットで星系宇宙へ。

　そこでペクサエテの敗残の艦隊に、拾ってもらって故郷へ帰還ともくろむが……

＊　＊　＊　＊　＊

　さんかく座銀河、多数のＯ型主系列星とウォルフ・ライエ星が集まる散光星雲、最大直径約１５００光年の最深部、巨大な青色巨星の４重連星の中にＮＧＣ６０４観測ステーションが浮かんでいます。

　直径５キロの小型戦闘ステーションを四基結合したタイプで、多数のコンテナと呼ばれる、直径約三百メートルぐらいの円筒形戦闘宇宙船を従えており、専用のドックなども完備、宇宙巡洋艦クラスの性能を持っています。

　ネットワークのさんかく座銀河方面に向かう、貨物鉄道トライアングル線の保線司令ダリヤの職務は、多忙を極めています。

　なんせトライアングル銀河とも呼ばれている、直径６万光年の領域を監視しているわけです。

　その為、ヘルメスジュニア搭載の、広域探知オプションステーション１２隻よりなる監視網からもたらされる、膨大な情報を解析しながら、貨物鉄道トライアングル線所属の、多数の戦闘ステーションの維持管理もしなければならないのです。

　何度も人員派遣を要請したのですが、トライアングル線は辺境のいわゆる盲腸線、ネットワークの軍事部門、ミリタリーとしてはどうでもよい、というのが本音。

　ただガリレオ衛星ステーションの執政官、アリシアのたっての願いと、戦略予備軍として成立を目指しているプラネテスへの配慮で存在している訳で、とても増員は望めないのですが……

　なんとか先ごろ、オルメカ種族として迎えられた、元戦闘探査艇の人工知能クレマチスが、ガリレオ衛星ステーション方面近傍宇宙未確認領域探査局兼務で派遣されたのです。

　クレマチスは極めて優秀、ミリタリー三軍の一つ、ユニバースのエリートではありますが新米のダリヤとしては、頼りになる存在。

　惑星スカラ・ブレイの管理など、雑務の一切を引き受けてくれ、ダリヤの負担は少し軽くなった時、トライアングル銀河で内乱が発生。
　軍務が超多忙になり、クレマチスは正式に貨物鉄道トライアングル線保線司令部勤務の副司令となり、ガリレオ衛星ステーション方面近傍宇宙未確認領域探査局兼務が解かれたのです。

　そして内乱は大したこともないようで、のんびりと推移、トライアングル線は通常監視体制にもどったのです。
　トライアングル銀河の覇者ソンガイ帝国の脅威などは、貨物鉄道トライアングル線の軍事力で、簡単に撃破できることが判明。

　慢性的人手不足にあえいでいるミリタリーとしては、ダリヤをガリレオ衛星ステーション軍事参議官として戻し、クレマチスを保線司令としたのです。
　このとき、ミリタリーの推薦で、クレマチスはついにチョーカーをいただくことになったのです。

　ＮＧＣ６０４観測ステーションは、ネットワークのさんかく座銀河方面に向かう貨物鉄道トライアングル線の中枢として、トライアングル線に付属する多数の戦闘ステーションを指揮し、再びこの方面の情報収集に努め出したのです。