姫神の女たち２ ユーノー・ソスピタ（維持する者）のニンフ 【ノーマル版】

第四章 真野静香の物語 ドルイダス

増員要請は却下です

　貨物鉄道トライアングル線周辺に、戦乱が迫ってきた。
　クレマチスに、いつまでもスカラ・ブレイのお守をさせるわけにはいかない。

　慢性的に人手不足なのはどこも一緒、ガリレオ衛星執政官アリシアは、『ドルイド交易』のために、何とか交代の管理官を派遣する必要に追い込まれ。

　しぶしぶ、有能な真野静香の派遣を決めた……が、スカラ・ブレイでも、きな臭いにおいが漂っていた……

＊　＊　＊　＊　＊

　貨物鉄道トライアングル線保線司令ダリヤは、忙しくなってきた。
　どうやらソンガイ帝国が、惑星マーシアを再制圧したようなのです。

　貨物鉄道トライアングル線保線司令部とはいっていますが、人員はダリヤとクレマチスだけ。

　そのクレマチスは、ガリレオ衛星ステーション方面未確認領域探査局からの出向者。
　スカラ・ブレイのお守に、かかりきりの状態なのです。

　ユニバースにとって、ソンガイ帝国が何をしようが、Ｍ３３さんかく座銀河の中で活動する分には、どうでもいいというのが本音です。

　ネットワークは慢性的に人手不足、勿論ユニバースも例外ではありません。
　シェルターステーションのてこ入れという、果実を手に入れた以上、これ以上の増員など、さらさらする気はないようです。

　ガリレオ衛星ステーションに派遣されている、他の軍事参議官も、重要路線でもあるソル星系外惑星鉄道やソル星系内惑星簡易鉄道などの、保線司令も兼務として抱えています。

　ソル星系外惑星鉄道といえど、増員要請は却下されています。
　とてもダリヤのところへの増員は、望み薄なのです。

「とにかくクレマチスさんに戻っていただかねば、どうしようもないわ」
「スカラ・ブレイのお守は、こちらの管轄ではないのよ、アリシア執政官に、適当な人物を派遣していただきましょう！」

　ダリヤさんの要請に、ガリレオ衛星執政官アリシアは答えることにした。
　スカラ・ブレイからの『ドルイド交易』が、順調に売り上げを伸ばしているのです。

　スカラ・ブレイからの無添加の羊、その加工品は好評なのです。
　特にラムジャーキーは価格も安く、長期保存が可能。

　貨物鉄道トライアングル線の使用料はかかりますが、かさばらないので安く収まっています。
　ガリレオ衛星ステーションからは、マルスへのナーキッドの貨物航路に乗せることが出来ます。
　そのため運送料はかなり安く、ラムジャーキーは低価格高品質、マルスで爆発的に売れているのです。
　
「ここで交易などストップしたら、目も当てられない、だれか管理人を派遣しなくてはね……」
「アニーのところのミエリッキ・オッコネン……だめね」
「ここの管理人って、執政官クラスですものね……そうだ、適任が一人いるじゃないの、彼女なら……」

　アリシアさんはオルゴール通信をつなぎました。
　立体ホログラムが浮き上がります。
　相手は三十前ですかね、目が大きくて細面で、きりっとした美人さんですね。