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第一章 ミトリの物語 第33独立軽歩兵大隊

撤退戦

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 撤退が始まりましたが、最前線の第33独立軽歩兵大隊は、後退がなかなか出来ない状況です、敵があまりに多い。
 それでも……
「隊長!弾がなくなりました!」
「弾薬がなくなった者から後退、宇宙船に乗れ!」

 一人、二人と兵士が減少し、押されるように後退するのですが、ここで押し戻さねば崩れそうになる。
 そんな事を繰り返しながら、ジリジリと後退するのです。

 エスティ・ラファエロは決断しました。
「ミトリ!ここの兵士を半分率いて、撤収してくれ!」
「そうもいくまい、とにかく死んでもいい者だけで守ろう」
「そうか、副官、弾薬をおいて、すぐに招集された者を率いて船へいけ!」

 そしてさらに後退し、いよいよ海軍が撤収し、あとは第33独立軽歩兵大隊の一部だけとなっています。

「士官と下士官を除いて、あとはすぐ船にのれ!急げ、持たんぞ!」
 さらにしばらく戦い、
「下士官は船にいけ!」

 いよいよタラップが見えてきました。

「ではいくぞ、皆、いいな!走れ!」

 一斉に走り始めました。
 ミトリも一心不乱に走りタラップまで、そして自身はタラップを守ろうと、振り返ると、エスティ・ラファエロが最後尾で戦っているのです。

 GTAR―21、いわゆるグレネードランチャー・タボールで、40mmグレネード弾をぶっ放しながら、孤軍奮闘、敵を食い止めているのです。

 よく見ると、足から血が滲んでいます。
 どうやら右足大腿部貫通銃創、骨が砕けているのかもしれません。
 エスティ・ラファエロはこちらを振り向き、「いけ!」と大声で云ったのです。

「エスティ!」
 我知らず、タボールをもって駆けつけるミトリ、乱射しています。

 宇宙船がタラップを引き上げ、ついに動き始めました。

「やれやれ、ミトリは私の物ですからね、難儀な事になった」
 そんな声がきこえたかと思うと、ミコさんが側にいました。

 そして、ドォーンともの凄い音がして、かなりの敵が黒焦げになっています。
「ミトリさん、後で奉仕してもらうわよ♪」

 呑気な言葉を発しながら、場違いなメイド用軍服を着込んで、優しげな笑顔を浮かべて、戦場に立っています。
 手には、メイドの間では噂にもなっている電撃杖と思われるものを持っています。

「さてミトリさん、この方、抱えてくださいよ、私が守ってあげますからね」
「ミコさま、どこへ逃げるのですか?」
「そりゃあ『US―3不死鳥』でしょう、まだ飛んでいますからね」

 そんなことをいっていると、堂々と『US―3不死鳥』が着陸したのです。
 この頃には、周りは敵だらけ、でも電撃杖の先端が青白く光り、稲妻がシヤワーの様に降り注いでいるのです。

「早く乗りなさい!」
 ミトリはエスティを抱え乗り込むと、あろう事か『US―3不死鳥』が勝手に離陸してしまったのです。

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