33 / 145
第六章 神託
メールが届きました?
しおりを挟むオムライスを堪能し、再びユーティリティビークル走らす二人。
雨は霧のようになり始めました。
「あれ、メール?ちょっと車を止めるわね」
どうやらユスティティアさんの脳内仮想PCに、メールが届いたようなのです。
「なになに?えっ、この先の道を左折してしばらく行ったところで、帝国軍の演習をやっている……」
「その演習地には、瘴気が凝り固まった『物の怪』が漂っており、帝国の小部隊に憑依した?」
「行って浄化してこい?これって、『神託』じゃないの?」
「でもね……」
黙ってユスティティアさんの独り言を聞いていたブラダマンテさんが、
「『神託』が下されたのなら、躊躇なく行わなくては、なにかご懸念の事でも?」
「帝国軍って嫌いなのよね」
?
「ブラダマンテさんを穢した皇帝の軍隊でしょう?粗末なものをお持ちの皇帝を、助けるなんてね……」
「ユスティティア様、『神託』なのですから……」
「そうよね、しかたない、いきますか……」
ユーティリティビークルを不可視にして、渋々演習場へ向かったユスティティアさん。
演習場では凄惨なことになっていました。
『物の怪』が取りついた小部隊が、帝国軍と戦闘しており、死体が累々と転がっているのです。
しかも、その死体にも『物の怪』が憑依して、ゾンビのように立ち上がり、元の仲間に剣を振るっている……
200リットルの水タンク、モータ動力噴霧器を取り寄せ、ユーティリティビークルの荷台に乗せ、水タンクに『霊薬』の半分を投入したのです。
戦場にユーティリティビークルで突っ込み、ブラダマンテさんが運転、ユスティティアさんが希釈した『霊薬』の噴霧器を持ち、『物の怪』が取りついた兵士に吹きかけながら、走り回っていました。
効果は絶大でした……
噴霧された『霊薬』は、雨霧とまじりあい、戦場一体を覆い、足元の泥濘にも『霊薬』が混じり……
憑依された兵士は、生者は生者に、死者は死者に……
「ユスティティア様、ここに倒れているのは……皇帝の弟、大公殿下のようですが……」
「ブラダマンテさん、知り合いなの?」
「亡くなった姉の元婚約者で……いい人なので……」
お姉さんって、ラロッシュ辺境伯たちが反乱を起こす、二年前に死んだと聞いています……
いい人ね……
「死にそうよね……というか助からないと思うけど……内臓がはみ出そう……でも、『神託』もあったし……この人の生き運にかけるしかないわね……」
「どう……されるのですか……」
「ここに『霊薬』の半分が残っているわ……」
「『霊薬』を……」
「あとはこの人の生き運次第……」
「あなた、この薬を飲みなさい、生きるか死ぬかはあなた次第だけど、のまなければ間違いなく死ぬわよ」
で、大公殿下は口を開いたのです。
しばらく見ていると……ぱっくり開いていたお腹の傷が、徐々にふさがっていき……
「傷がふさがったわ、顔色も少し良くなってきたわ、後は部下が何とかするでしょう」
『霊薬』をのませた後、少し離れたところから、見ていた二人……
「さあ、戻りましょう♪長居は無用よ」
ユーティリティビークルは街道に戻っていきます。
街道にたどり着くと、
「轍が残っているわね、道の傍の草の上を歩いていきましょう……草の上なら、足跡もそんなに残らないと思うわ」
ユーティリティビークルを収納し、歩いて街道沿いを行く二人……
雨は降り止み、雲の切れ間から日差しが差し始めています。
街道少し行くと、再び右折する小道がありました。
『索敵』が、少し奥まったところに広場があると表示しました。
二人は、その広場へ向かうことにしたようです。
「ここらでいいでしょう♪今日はここで野営しましょう♪」
「さすがに4番住宅よりは広い物がいいわね、足を延ばして寝たいものね♪」
3番住宅を設置、迷彩をかけて、ロフトベッドや食卓三点セットを収納し、マットレスを二つ並べて……
「とにかく寒いわ、お風呂に入りましょうよ♪」
二人とも、寒くて疲れていたようで、服を脱ぎ散らかしながら、お風呂へ……
「生き返るわ♪」
かかった費用は、水タンクが21,900円、モータ動力噴霧器は39,000円、繰り越し金でまかなえたのです!
残り24,653円、3デナリウス金貨、5キナリウス銀貨、1セステルティウス銀貨、2クァドランス青銅貨に1円足らず。
まだ今月分には手を付けていません♪
「あら、またメール?」
入浴中でもメールが読めるなんて、脳内仮想PCの便利な事……
24
お気に入りに追加
93
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる