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第五章 なんといいましょうか
ソロン商会の会長さん
しおりを挟む馬車に乗り込むと、三人ほど乗られていました。
この馬車はサントロからリンド往復する乗合馬車、二人の盗賊がこの馬車に乗っていたので、私たちが乗っても定員と云う訳です。
「すいません、突然乗り込むことになりまして」
「いえ、いいのですよ、おかげで命があるのですから」
「旅人さんは、何処へ行かれるのですか?」
「カルヌントゥムまでです、知り合いに料理屋をしないかと誘われまして……」
「それはそれは、カルヌントゥムまでですか、いささか遠いですね」
「知り合いは地元のお金持ちなので、用事が出来て同行できなくなり、取りあえず傭兵さんを雇ってくれたのです」
「皆さんはリンドへ?」
「私どもはサントロの靴屋で、妻と二人でリンドへ売掛金を頂きに行く途中です、こちらの方はゴールドシティーと伺っています」
先ほどから、この方々から、『鑑定』をかけられているのが分っていますが、素知らぬふりです。
私は迷彩がかかっていますが、ブラダマンテさんも私が迷彩をかけているのです。
ブラダマンテ・メロウ
19歳
称号
『自由傭兵』
所持魔法
『風の剣』、ビギナーレベル
私は、
ユスティティア・サビナ
17歳
称号
『料理人』
称号とはほぼ職業を表しますからね、『料理人』で十分……
だから、ぺらぺらと料理屋の話しをするわけです。
ブラダマンテさんも、ラロッシュなんてついていたら、いらん詮索が入るでしょうから変えたのです。
まあ、『鑑定』をバンバンされるので、さっさとおさらばすべきですね。
この三人、多分同じグループでしょう。
2時間たち、サントロの城門が見えてきました。
カルヌントゥムへ向かう道は、サントロの城門をかすめていきます、町には入らないのです。
「短い間でしたが、楽しく過ごせました、ここでお別れです、女神様のご加護がありますように」
「女神様のご加護がありますように」
自称靴屋の夫婦が挨拶を返してくれます。
馬車を降りようとするとき、今までほとんど喋らなかった紳士が、
「私はソロン商会に勤めているのだが、ソロン商会のカルヌントゥム支店長に紹介状を書かせていただいた、これを渡してくれれば便宜を図ってくれると思う、せめてもの感謝の印だ」
「ありがとうございます、それではご厚意ですのでお受けいたします、女神様のご加護がありますように」
「女神様のご加護がありますように」
やれやれ、やっと解放されましたね。
二人で南に向かって歩き始めました。
「会長、驚きました、料理人風情に、支店長への紹介状とは……」
「私はな、ラロッシュ辺境伯の娘、『ラロッシュの守護騎士』に会ったことがある、あの『自由傭兵』はそっくりの姿形……しかも名前がブラダマンテ……」
「しかし『ラロッシュの守護騎士』はとらえられて、皇帝陛下が物にして、子孫が産めないような女の身体にしたとか」
「さらには顔に大きな切り傷を付け、魔法を封印させ、『犯罪奴隷』として奴隷商に下げ渡したときいておりますが」
「『鑑定』をかけてもブラダマンテ・メロウ、『自由傭兵』とあります、『犯罪奴隷』とされたら、『鑑定』のどこかに『奴隷』の二文字が表示されるはずです」
「『鑑定』を誤魔化すことはできません、私も会長もミッドレベルの『鑑定』持ちですよ」
「そうだったな、お前のいうとおりだ、私の考えすぎだろう」
もし本物の『ラロッシュの守護騎士』なら、あの傷をどうして治したと思うか?
どうして『犯罪奴隷』の文字が消えているのか?
答えは隣の女だぞ。
『自由傭兵』は例え雇い主といえど、あんなに丁寧には接しない。
そもそもカルヌントゥムまでの旅だぞ、あの二人は手ぶらだったのに気がつかないのか?
隣の女はもしかすれば伝説の聖女、そのようなことを考えないのか……
もしかせんでも『聖女』だぞ……
私の『鑑定』は実はハイレベル、それがあの女を『鑑定』にかけても変わらないが……違和感を感じるのだ……ハイレベルが違和感……
相手が『聖女』しかあり得ない……
「まあ、良いではないか、少なくとも我らは助けてもらったのだ、便宜を図って当然ではないかな」
「そうですね」
やはり、こいつは駄目だ、リンドの支店長止まりだ……
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