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第十六章 神の娘
クリスティンの記憶
しおりを挟む「さて、アメリカへ行きますか?」
「菊姫さん、お春さんと寺山千代女さんを、指導しておいてください」
「留学生の問題も任せましたよ、貴女なら良き方々を選べるでしょうし、日本政府の相手もできるはず」
「山田さんの奥様も、貴女に仕えていた方、手伝ってもらえるでしょう」
マッハ号が航空路を開拓しますので、この後は、川口からはアメリカ経由で、ヨーロッパに行くのがいいと思います。
やはりジェット気流に乗らなければね。
ブラックウィドゥ・ノーザンクラウン・エアーフライト社がこの後、定期航空路を運行する予定です。
アメリカでは、例の三名の留学生、今ではブラックウィドゥ・スチーム・モービルの奨学生ですが、会津の菊姫が担当することになったと伝えておきました。
出来れば将来は川口に住んで、ラックウィドゥ・スチーム・モービルで、働いてもらいたいとも、伝えておきました。
そののち大西洋を横断し、ロンドンのマーブル・ヒル・ハウスに戻ってきたのです。
駆け足でしたが、世界周回航空路も開拓できました。
「疲れました……すこし休みます……」
「今夜はどなたを呼ばれますか?」
マッケンジー夫人が聞きます。
「クリスティンさんに相手してもらいましょう、明日は貴女ね」
と、マッケンジー夫人のお尻をなでなでと……
ううん……などとお色気満点で、
「お約束してくださいね♪」
などと、云ってくれます。
クリスティンさんをとことこ責めて、放心状態になったところで、無意識をのぞいてみましょう……
失神状態のクリスティンさん、脳の海馬を操作して……記憶を呼び出す想起ですね。
幽子の身体といえど、その構成は人の身体と何ら変わらないのは、クリスティンさんに体を与えた時に、理解しています。
あまり褒められた行為ではありませんね……人の心、その無意識領域をのぞくのはね、クリスティンさんの感情が分かります、これは内緒ですよね。
いよいよ……聞こえてきました……サンスクリット語ですよ。
……『デーヴァ……』、命じる者よ……『デーヴィー』は従う僕(しもべ)……それが喜び……
歌うように聞こえてきます……
つづいてクリスティンさんの知覚が湧き上がってきました。
誰かに抱かれ、そして追い詰められ、被虐感に陶酔しています……
……あるじ様……鞭打って命じてください……この『デーヴィー』に……
それは膨大な声の唱和となります……
……この『デーヴィー』に従う喜びを……
いよいよ、一人の人物があらわれると、陶酔はさらに高まり……
その人物は、
「デーヴァに仕え、子をなす者どもよ、我の望みし世界の血肉となれ」
『デーヴィー』達はその声を聴き、全身痙攣するように逝ったのです……
そして一つの世界があらわれ、その後、天空の星々があらわれ、突如として1872年の歴史が実体化したのです。
そろそろ危険です、ここまで解れば十分です。
クリスティンさんの記憶を、復元しましょうね。
大事な方ですもの。
「クリスティンさん、大丈夫?」
意識が戻ったので聞きますと、蛇のように体をくねらして、
「ご主人様……もう私は……身も心もご主人様の物……命じてください……どんなことでもいたします……そして、いつでもどこでも、私はお待ちしています」
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