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第十四章 川口居留地
神のメッセージ
しおりを挟む『アッシュアトゥマン』……
これ、ひょっとして英文ではありませんか?
『Ashes a to man』の事では……
訳すと『灰の男』になりますか……
もう間違いなく、『天之御中主(あめのみなかぬし)』神のメッセージでしょう……
私が文明開化の明治の日本で、お女郎さんを二人身請けする羽目になったのは、この言葉を私に伝えるためなのでしょう……
そもそも、イギリスに飛ばされたことで、気づくべきかも知れませんでしたね……ジョージアナ時代は必然だったのでしょう……
パクス・ブリタニカは、分岐点でもあるのかも知れません。
人に満ち満ちた世界の時間を閉じ込めた歴史。
歴史を開けば時間が喜ぶが、男の世界にそのようなもの差し出すな。
この惑星で必要な歴史と時間は女の世界である。
その時、ジョージアナ時代は女の世界に変わっていく。
『Ashes a to man』……
マザーグースのときのように……文法上の解釈は関係ないのです……
今の状況からの、意訳が必要なのでしょう……
Ashesは遺灰の意味もあります……
男は燃え尽きた……または男は灰になった……事実、男の世界は終わりに来ています……遺灰になった男……
私の感が違うといいます……もっと別の意味がある……
遺灰になった男……つまりは過去に存在した男……今は存在しない男……ありえない男……
そういえば、私がこのジョージアナ時代に飛ばされたとき時が操作されていた……
天之御中主(あめのみなかぬし)』様の御技と思われるが、
神とは時を超越できるのか……
時に縛られないなら、因果律も意味をなさない……
私は昔、因果律を『くだらない』と断罪したが、しかし、普遍のものと理解するしかなかった……
時を手玉に取れるなら、過去も未来も神様の御前では今日なのでは……
いや、時の外から世界を眺められると、考えたほうがいいのでは……
宇宙の外から、私は宇宙を眺めることができる……それと同じで、天之御中主(あめのみなかぬし)』様は、時の外から、時を眺めることができる……
その神様が『Ashes a to man』……と、お言葉を啓示された。
この世界、そう非物質の世界、幽子の世界にも、流れる時を遡上した先に、何かがある……
いま、この幽子の世界は、本来存在しない世界、そこで『灰の男』というキーワードに出会う……
『灰の男』ですか……存在しない男……いなくなった男……遺灰の男……
「珍しいですな、男勝りの貴女が独り言なんて」
山田五郎さんの声に、我に返りました。
かなり考え込んでいたようです。
川口居留地の、ホテルの近くまで来ていました。
「私でも、殿方のことを考えることもあるのですよ……」
「ほう、男は汚らわしいと、お考えだと思っていました」
「そうは思っていません!」
「遺灰の男ですか……いい男が死んでいきました……」
「新撰組ですか?」
「そうです……土方さんも近藤さんも……沖田はかわいそうだった……」
「死んだ人は美しく見えるのでは……でも貴方の方が立派でしょう……生きてこそ、明日を切り開ける……」
「私は死に損ねたのかもしれない……」
「山田さん、これから世界は変わるのです、新しい世界を見れるのですよ」
「……」
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