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第十四章 川口居留地
あしやどうまん
しおりを挟む「こちらに来なさい、覚悟をしてね」
潔く来ましたね、側に引き寄せ、胸元から手を入れて乳房などを……
ビクッとし、震えていますが、歯をかみしめています。
今度は裾から手を入れて……
「貴女、本名は?」
「寺山千代女」
「私の物になり、仕えますか?」
黙ってうなずきました。
「ではついてきなさい、帰りますから」
「床入りは?」
「ここではね、かえってから、ゆっくりと吟味しましょう」
渡辺昇さんに来てもらい、この寺山千代女さんを身請けしたいと申し出ました。
めんどうな手続きは、大阪府がしてくれるそうです。
莫大な額を支払ってあげましたよ。
それから行きがけの駄賃で、あの煙管を渡しかけたお女郎さんも、身請けしておきました。
なんでも25歳、お春が本当の名だそうです。
この方、私の煙管を受け取ろうとした、ただ一人のお女郎さんでしたからね。
でも奇遇ですね、こちらも播磨の佐用の出身だそうです。
馬車の中で、お女郎さんたちと、とりとめない話をしましたが、蘆屋道満大内鑑(あしやどうまんおおうちかがみ)を見ての帰りと言いますと、お春さんが懐かしそうに、故郷の道満塚の話をしました。
お春さんが、
「村のお年寄りは、『アシアトウマン』さんといっていました、私はよく道満塚にお参りしていました」
アシアトウマン……カタカムナ文献に出てくる名前です。
カタカムナ文献は『アシアトウマン』なる方が書かれたと、よくいわれていますが……
カタカムナとは古史古伝の一つ、日本の超古代文明ともいわれています。
あの八芒星の手鏡に浮かび上がった文字、色々いわれていますが、明らかに『天之御中主(あめのみなかぬし)』様がお使いになる文字、というより、私に対して神の思いを伝える伝達方法……
すると寺山千代女さんが、
「私も道満塚の話は知っています、父が寺社方でしたので」
「それに佐用は龍野藩が預かっていた天領ですから……」
「そういえば、父が変なことを言っていました」
「蘆屋道満(あしやどうまん)って、本当は『アッシュアトゥマン』っていうんだよって……」
「なんでも六甲の金鳥山中腹にある保久良神社(ほくらじんじゃ)の近くで、陰陽師に出会ったとき、その方は蘆屋道満(あしやどうまん)、本名は『アッシュアトゥマン』様の流れをくむ……そういっていたそうです」
少し考えたいですね……歩いて帰りますか……
お女郎さんを乗せた馬車は、先に帰ってもらいました。
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