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第十三章 1875年の戦争

ヴェルダン防衛戦

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 午後のお茶にグレナディア連隊を招待して、私から感謝の言葉を述べました、そして……
「それでは皆さん、少し私の余興でもご覧ください、グラディス少佐、後は任せましたよ」

 ?

「九八式装甲運搬車を一両貸してください、クレア准将、運転してくれますか?」
「何をされるのかは、想像できますが……」

「私は血を見るのが好きなのですよ」
「……」

「一つ、はしたない女の余興を、ご覧に入れましょう」

 ドーモン堡塁から、一両の装甲運搬車が出ていきました。
 当然銃弾の雨ですが、傘がかかったように一発も届きません。

 その装甲運搬車には一旒(いちりゅう)の旗……
 鮮やかなグリーンの地色に、ブーディカが身に着けたと言われるオーナメントを、金で図案化しています。

 私はこの九八式装甲運搬車に、ブローニングM2重機を積んでいます、これ名銃中の名銃と思いますね……
 エラムのガルダ草原の決戦で、これに助けられましたからね……
 これでばらまくように射撃しています。

 銃身交換を容易にしたFN M2HB―QCBというタイプ、しかも私は魔法使い、どんどん交換してどんどん撃ってあげます。
 戦いです、情けは殺し合いには不要なのです。

 美しい戦いなどあるはずはなく、どうなろうとも、どこかで誰かが泣いて、誰かが不幸になり、誰かが英雄になる……

 これが戦い……奪い奪われる……強盗と大して変わらない……正義の戦いなどありはしない。
 利己特性がなくならない限り、絶対に戦いはなくならない……しかもこの戦争は必然性がない……

 少なくとも、いま生きて戦おうとしている人々には、戦う理由がないのです……
 私は殺し合いを強制する、地獄の魔女でしょう……

 戦場を一台の装甲車が、ドイツ兵をなぎ倒しています。

「アリアンロッド様に続け!」
 喊声とともに、ブーディッカ婦人戦闘団が出てきました。
 私を守るように取り囲んできました。

「集まれ!」
 と、クレア准将が無線で命じますと、団本部車両ががピタリとよってきて、それを中心に密集隊形をとりました。
 八九式重擲弾筒等を打ちまくりながら、ドイツ軍の中で暴れまくっています。

 中に一人、奮戦している女兵士に目が留まりました。
 彼女はフェドロフM1916を打ちまくって……
 ドイツ軍が崩れ始めました。

 形勢優位と判断したのか、グレナディア連隊が突撃してくれました。
 ついに後退を始めたドイツ軍。

「これはどうしたことか!味方の中央が崩れているぞ!」
 ドイツの戦線後方にある司令部の、あわただしい会話でしたがすぐに沈黙しました……

 四式二十糎噴進砲の、弱装弾による長射程タイプのサーモバリック砲弾が、最大射程八万メートルで、この司令部近郊に着弾したのです。
 半径一万メートルが、衝撃波で破壊されました。

 両翼に残っていたドイツ軍は、雪崩を打つように撤退を始めましたが、そこにもう一発、サーモバリック砲弾が着弾します。
 ドイツ軍の中央集団は撤退を中止、イギリス軍に対して、降伏を打電してきました。

 フランス北東部の戦は、あっさりと終わったのです。
 私は奮戦していた女兵士を呼びました。

「ソフィア・ペロフスカヤさん、久しぶりです」
「私は貴女の戦功に、報わなければなりませんね、望みがあれば云ってください、できる事ならかなえてあげます」

「貴女の世界を見てみたいのです、その為なら、身も心も差し出します!」
 真っ赤な顔で云いましたね……

 確かにこの戦功で、世界は変われるかもしれない……ヴィーナスネットワークを見せることも可能……

「その覚悟があれば、実現できるでしょう……」
「来年には事が決しますから、代価を差し出す覚悟で私に仕えなさい」
「ソフィア・ペロフスカヤ、ガヴァネスとして、女孺(にょじゅ)の位を授ける」

 ドイツ南部は、巨大輸送飛行船ギガース号がピストン輸送して増強した、イギリス遠征軍が占領することになったのです。

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