惑星エラム 幻のカタカムナ 第一部 パクス・ブリタニカ編 【ノーマル版】

第五章 黒い未亡人(ブラックウィドゥ)

変革シュミレーション

「ブラックウィドゥ・スチーム・モービル社の事務処理には、大量のガヴァネス――個人の家庭内で子供たちを教育し、訓練するために雇われる女性のこと、女家庭教師――を雇ってください」
「いま女性は余り気味ですからね、これから女が一人で生活できるようにしなければ、この先、軟着陸は難しいのです」

　女王陛下が、
「蒸気自動車がどうして必要なのですか？」
「まずは男と対等になれる社会を、構築する必要があります」

「男と女の違いは基本的に体力、そして暴力です」
「しかし蒸気自動車のように、力を代用してくれる機械が増えれば、そのハンディは薄くなります」

「いま、世界は大不況です――１８７３年―１８９６年に起こった世界的な経済不況――、その中、イギリスは一人勝ちするのです、そしてアメリカを経済支配するのです」

「あの広大な国は、移動機械が必要です、自動車はアメリカ支配のツールになります」
「何としても、アメリカの油田も安く買い占めておきます」
「ブラックウィドゥ・スチーム・モービルの名義でね」

「あまり堂々と出すのも問題がありますが、金は正直いくらでも出せます」
「この不況から、金本位制になるでしょう、したがって、金の力は国家の力ともなります」

「金の資源は南アメリカ、ここはボーア人の土地ですから大変ですよ」

「これはイギリス政府に任せて、ブラックウィドゥ・スチーム・モービルは、オーストラリアで採掘を開始するのです」
「場所は私が正確に教えてあげます、すぐに採掘権を設定してください」

「ブラックウィドゥ・スチーム・モービルは、すぐに大会社になりますね」

「ブラックウィドゥ・スチーム・モービルは、世界を牛耳る会社になるのです」
「社員は女性も多く採用します、幹部にも女性を増やしていきます」

「さらに私や、女王陛下の親衛婦人部隊も成立させます、この部隊に警護をしてもらいます」
「勿論、装備する兵器は、この世界のものではありません、それなりのものを提供しましょう」

「……」

「そしてブラックウィドゥ・スチーム・モービルのお金の力で、ロシアと話をするのです」
「いまフランスは疲弊しています」
「この隙にロシアと接近し、内側からお金で支配していきます」

「今、ナポレオン４世はイギリスにおられるでしょう？」
「多額の資金援助で、ボナパルティストをあおり、帝政を復活させます」
「そして恩着せがましく、フランスを金融支配してしまうのです」

「大陸のすべてのロスチャイルド家は不要です、どさくさに紛れて、破産してもらいましょう」
「そしてフランスに、普仏戦争の復讐をけしかけるのです」
「ドイツ帝国を叩きのめすのです」
「ロシアに圧力をかけさせておけば、フランスは勝てるはずです」

「ドイツは優秀すぎます、何としても帝国はバラす必要があります、ビスマルクの夢は許されないのです」

「この時、親衛婦人部隊はドイツ軍を撃破します、必ず撃破させます」
「さすれば戦闘においても、女は男と対等に戦えると、世界に知れ渡るでしょう」

「本当に実現しそうに思えるのが怖いですね……」

「もしうまくいかなければ、嫌でもうまくいかせます、私にはその力もあります」
「魔力と言われるものを動員します、調べて見ると、この世界でも発動できるようですから」
　先日、私は個人用ナノマシンを増殖させました。

「最後に女王陛下の指導の下、世界は協調し、そして女は男を掌の上で躍らす世界とします」

「そうそう、もうすぐ女が多く生まれ始めますから、英国国教会のカンタベリー大主教あたりに、啓示でも囁きましょうかね」

　私はアルプの囁く物まで作り、動員するつもりなのです。