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第四章 国家の機密

とてもシンプルな解決法

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 アフタヌーンティーに呼ばれ、マッケンジー夫人とともにやってきたディズレーリは、レディ・アリアンロッドの件を聞き、困惑を隠しきれませんでした。

「女王陛下……どう考えても、その女は詐欺師ではないのですか?または狂っているのでは……」
「貴男がそう思っても、不思議ではないとおもえます」
「しかしこれは事実です、この電報を見なさい」

「……これにあることを、そのレディ・アリアンロッドがしたと?」
「そう……」

「首相、これを見てどう思われますか?」
「これは?」
「リンダが、そのレディ・アリアンロッドからもらったものです」

「なんに使うかはこの際、関係ありません、問題はそれに使われている金属です、アルミです」

 !

「しかしアルミは高価な貴金属――この当時はアルカリ還元法で作られていたのでとても高価、工業製品としての量産化はホール・エルー法と言われるものが発明される1886年からとなる――、おいそれと使うものではない……それを簡単に……」

「思うにレディ・アリアンロッドは、アルミの大量生産方法を知っているかと、これを調べさせたら、このアルミはアルミではあるが、成分が違うらしいのです……」

「強度が全然違うらしいのです……しかも、このシートは未知のもので、水を通さない布のようです」
「かなり強度もあるそうです」

「ディズレーリ、貴男なら、このレディ・アリアンロッドをどう扱いますか?」
「とにかく極秘、そして懐柔……最悪は暗殺……」

「妥当な結論ですが、最後は無理でしょう……私にはこれを行うと……そら恐ろしい結果を呼び込むことになりそうで……怖いのです」

「……女王陛下……とにかく一度お会いできないでしょうか……」
「お話を伺う限りでは、好意を持たれているようですし……正直に、イギリスの首相がお会いしたいといえば、面談もできそうな方のようです」

「伺ってみましょう……マッケンジー夫人、丁寧にお呼びしてくれませんか……イギリス首相が、面談を希望していると……」

 多少もじもじしているクリスティンさんに、算数なんか教えているときに、マッケンジー夫人がやってきました。
 要件を聞くと、えらいオジサンが会いたいとか……
 まあ叔母様の執事と思えば、いい事ですからね、了承しましたよ。

「クリスティンさん、せめてその分数ぐらいは、理解してね」
 と、言い残して、私はヴェールをつけて、マッケンジー夫人に案内してもらいました。

「申し訳ありません、正直にいいますが、子供たちの血友病が、治療されたかどうか調べていました」
「まだはっきりとはわからないのですが、息子のいうことには、血がすぐに止まったということです」

「心から感謝いたします、お約束の屋敷は、この首相の協力が必要なのです」

「そうですか、で、どう見ました、危ない女だから殺しますか?」
「私は構いませんよ、そうなれば、面倒はないのですから」
「意味が分かりませんが?」

「相手が消えれば問題も消える、そうでしょう、とてもシンプルな解決法です、ジェントルマンを、標榜しなくてもいいですよ」
「軽い挑発ですな、試してみていかがですかな」
 ほっうと、笑ってしまいました。

「天秤は良きほうに、ほんの少し傾いた、そんなところでしょうね」
「なにを意図されているのか分かりませんが、とにかくお屋敷の事は了承しました」

「しかしお願いがあります、女王陛下から使用人が差し向けられますが、よろしいですね」
「それと警備の人間も、お屋敷の周りに詰めさせますが、それも了承してください」

「檻に入れたいということですね、まぁかまいませんよ」
「よくあることですし……そのほうが好都合ですしね……」

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