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第三章 ブリタニアの膝元で
リンダさん
しおりを挟むリンダさんが、侍女さんたちを引き連れてやってきました。
「レディ・アリアンロッドとレディ・クリスティン・ハワードは、私のプライベートなとても大事なお客様です」
「とくにレディ・アリアンロッドはご不幸があり、ただいま喪に服しておられますが、私の姪として扱ってください」
「リンダ、貴女の従妹に当たる方を、ご案内しなさい」
「アリアンロッド、あとで聞きたいことがあります」
「案内の者を差し向けますので、ともに来てください、アフタディナー・ティーをいたしましょう」
この叔母様は、こういうと私を見ました。
「ぜひ伺います、叔母さま」
と、答えざるえませんでした。
部屋に案内されましたが、リンダさんが離れません。
「ありがとうございました」と言いますが、何としても部屋を出ていきません。
「入浴したいのですが」と言いますと、ものすごく驚いていました。
どうもこの時代、今は1874年の三月だそうですが、シャワーなどはないようです。
スリップなどの薄物を着て、お付の人がタオルを持って待っているとか……
仕方ないので、簡易組み立て浴槽を持ち出しました。
この頃私は、この専用通販カタログさえあれば、どこでも作り上げることができるのです。
アルミ骨格で内側にシートを設定して……と。
お湯は……バースから持ってきますか、45度ありますからね……
クリスティンさんも、かなり驚いた顔をしています。
で、リンダさんががんばっているのですが……まぁ気にしないと……
私が服を脱ぎ始めると、真っ赤な顔をしましたが……凝視してくれますね……
クリスティンさんは、
「私は別室におります、終わりましたら、お声をおかけください」
と、出ていきました。
「恥ずかしくないのですか……」と、リンダさん。
「恥ずかしいですよ、でも昔からの習慣ですし、美容にもいいですからね、いっしょにいかが?」
「……」
まぁ、そうでしょうね……無理強いはね……極楽気分を味わえるのですが。
と……おずおずと服を脱ぎ始めて……コルセットですか……タイトレーシング……この時代のコルセットの締め方ですか……
ちょっとやりすぎのような……
シミーズを脱ぎ……ドロワース――ゆったりしたひざ丈のズボンのようなもの、かぼちゃパンツ?――を脱ぎ……
あらあら……全身真っ赤ですよ……
「アリアンロッド姉さまの、お誘いですから……」
いつから私は、姉になったのでしょう……でも可愛いからいいですが……
「私は姉なのですか?」
「はい」
「では、姉らしくいたしましょう……でも、きずいておられるでしょうが、私は同じ人ですが、時と場所が違うので、常識が違うと思います、至らぬ姉を助けてくださいね」
「レディ・クリスティン・ハワードは?」
「この世界の方ですよ、その昔の王妃さんに、そっくりでしょう?」
「綺麗な方ですね」
「苦労された方なので、優しくしてあげてください」
「分かりました、アリアンロッド姉さま」
可愛いですね、素直ですし、叔母様に少し似ていて、多少ポチャッとしていますが、バラ色のほほを持つ少女、娘さんになれば、美しくなるでしょうね。
このリンダさんだけは、何があっても守ってあげましょうか……たとえこの世界が、存在を許されなかったしとしても……
これは私の好意……代価ではありませんから……
「体もあったまったし、すっきりしましたし、出ますか?」
私が湯船から出て、裸で体を拭いていますと、リンダさんが、
「アリアンロッド姉さま……ヴィーナスみたい……」
といいます。
内心ドキッとしました、私の名前を呼ばれたみたいで……
「ヴィーナスって私の愛称なのよ、でもお隣の星のヴィーナスは、地獄の惑星よ」
こんな話をしながら、リンダさんの髪を拭いてあげ、なおかつ、整えてあげました。
「このお風呂とドライヤーは内緒よ」
「ええ、分かっているわ、でもお願いがあるの?」
「なあに?」
「あのお風呂というの、あれくださらない?」
「いいですよ、でも貴女なら、あんな簡易式の湯船など不必要でしょうに……バースへ行けばよい話」
「お姉さまのものだから欲しいの……」
「じゃあ、進呈しましょうね」
お湯はテムズ川に捨ててしまいました。
簡易浴槽はたたみました。
リンダさんのコルセットを締めてあげて……と……
「お姉様にしてもらうなんて……」
などと、云っていますね。
さて、私は黒い喪服を着ましょうね……
「終わりましたよ」と、クリスティンさんに、声をかけました。
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